The Institute of SC Trend

ショッピングセンターでの業種動向を可視化するショップブランドの新たな分類の検討【1】

ショップブランドの新たな分類手法に向けたトライアル分析【1】
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SCトレンド研究所では、2017年12月の活動開始から、四半期SC出退店D.I.、四半期SC出退店ランキングなどの記事や、「ショッピングセンター 出店・退店動向レポート」(18年9月発刊のレポートの紹介はこちら)において、大業種、中業種、小業種という業種分類を用いてショッピングセンター業界における業種の動きを伝えようとしてきました。ところが、昨今、「モノ消費」から「コト消費」へのシフトが進んでいるといわれる中、これまで用いてきた業種分類では、ショッピングセンター業界で起きている事象を十分にお伝えできないと感じることが、少なからずありました。

そこで、SCトレンド研究所では、市場の動きをわかりやすく伝えるための、ショップブランドの分類手法についての検討をスタートしました。

これまでレポート等で利用してきた業種分類は、大業種、中業種、小業種という樹状構造の分類となっています。業種分類はショップブランドが販売する商品を中心に組み立てられた分類となっていることから、商品を販売しない「飲食」や「サービス」といった業種は、最も樹の根に近い大業種レベルで、物品販売とはまったく別の区分として扱われています。
そのため、先に触れた「モノ消費」から「コト消費」へのシフトに伴うサービス業種領域の多様化により、同じ生活行為やシーンに関連するショップブランドが別の大業種に分類されることも多くなっています。例えば食品を例にとると、「内食(家庭内で調理を行って食事を行う形態-Wikipediaから引用)」「外食(飲食店など家庭外で調理された食品を家庭外で食事する形態-Wikipediaから引用)」に対して「中食」が登場したように、「食べる」という行為に関連するものとして、「食品物販」と「飲食」は同じグループであるにも関わらず、従来の業種分類では別の大業種に分類されてしまうということが、わかりやすい一例として挙げられます。

本稿ではこうした背景を踏まえ、従来の業種分類とは異なる視点での、ショップ分類手法とその可視化方法についてトライアル分析した結果を報告しています。

新たな分類手法とは

生活者が何に時間と金銭を消費しているかをベースにした区分と「モノ・コト」を掛け合わせる

新たな分類手法を検討するにあたり、まず、生活者が何に時間と金銭を消費しているかという、消費対象分野視点での区分を検討しました。
その結果、生活(生存して活動することー広辞苑より)に必要な「衣食住」や日用品といった「生活基盤」のための商品やサービスと、その生活をより充実させるための「生活発展」のための商品やサービスに大きく分けることとしました。

この2つの大きな区分は、米国の心理学者のアブハム・マズロー(1908年4月1日~1970年6月8日)が提唱した「欲求の5段階説」でいえば、「生活基盤」は「生理的欲求」や「安全欲求」といった低次の欲求寄りの区分で、もう一方の「生活発展」は「尊厳欲求(承認欲求)」や「自己実現欲求」といった高次の欲求寄りの区分となります。
その上で、「生活基盤」を「衣」「食」「住」などの視点で5つの区分(総合とその他を含めると7区分、食についてはいわゆる食事を対象とする「生活食」という区分と、スイーツや飲酒を対象とする「嗜好食」の区分を用意)に区分するとともに、「生活発展」を趣味趣向により6つの区分(その他を含めると7区分)に区分しました。
こうした考え方を採用することで、冒頭に触れた「食べる」行為に関わる食品販売と飲食が同じ消費対象分野区分に含まれるようになります。また、スポーツに関わるスポーツ用品販売、スポーツ関連教室、スポーツ施設は、業種区分ではスポーツ・ホビー大業種、サービス大業種、アミューズメント大業種と3つに分かれていましたが、新分類では同じ消費対象区分内に分類されるようになるなど、一つのテーマに関するモノ消費コト消費が一つの分類にまとめられます。

ここで触れたように、今回の分類方法では、一つの消費対象区分の中にモノ消費コト消費がまとめられることから、第2の区分としてそれぞれの消費対象区分に対して「モノ消費」と「コト消費」という区分を設定しました。
その結果、先ほど例示した「食べる」行為に関わる領域であれば、食品販売はモノ消費に、飲食はコト消費に分類されます。また、スポーツに関わる物品販売やサービスも、スポーツ用品販売はモノ消費、スポーツ関連教室とスポーツ施設などはコト消費に分類されます。

こうした2つの考え方に基づく新分類に、SC GATEデータが持つ300を超える小業種分類を当てはめ、それぞれの区分にどういった業種が含まれるかを例示した結果が図表1です。

図表1 新たな分類と旧業種区分(小業種)との関係

新たなショップブランドの分類手法の可視化

生活基盤・発展、モノ・コト消費の2つの軸で可視化する

これまで、商業施設のショップブランドの業種構成を可視化する場合、業種分類が樹状構造であることに加え、それぞれの大業種に属する中業種・小業種定義のレベル感や分類方針が異なることから、商業施設の業種構成の可視化は困難でした。そこで、今回検討したショップブランドの分類手法を用いた可視化手法について検討しました。

すでに説明したように分類区分は「生活基盤・発展」と「モノ・コト消費」という2つの軸で構成されていることから、可視化する際は「生活基盤・発展」軸でとらえる場合と、その内側にある「モノ・コト消費」軸を区分して可視化することとしました。

図表2は「生活基盤・発展」軸で“TerraceMall湘南(テラスモール湘南)”(神奈川県藤沢市に所在、住商アーバン開発株式会社が運営)のショップブランド数を、ツリーマップで可視化したものです。大きく「生活基盤」と「生活発展」がどういうバランスになっているのか、生活基盤の中で服飾品がどの程度を占めるのか、生活発展の中の文化系娯楽と運動系娯楽のバランスなども、見やすく表現されています。

図表2 「生活基盤・発展」軸での分類(テラスモール湘南)

次に「モノ・コト消費」軸での可視化を試みたのが図表3です。

このグラフでは、各消費対象区分について、右方向にモノ消費側のショップブランド数、左方向にコト消費側のショップブランド数を配置しています。
その結果、「生活食」ではモノ消費コト消費がほぼ半々でバランスが取れているのに対し、同じ『食』領域の「嗜好食」についてはコト消費よりもモノ消費に寄っていることがわかります。文化系娯楽と運動系娯楽では、文化系娯楽ではモノとコトが同程度となっているのに対し、運動系娯楽ではモノ消費に偏っていることから、今後、運動系体験施設、運動系教室などの可能性が伺えます。

また、「服飾品」もモノ消費への偏りが大きく、この領域でのサブスクリプション型ビジネスの進展が指摘されるな中、ショッピングセンターでのサブスクリプション型ビジネスへの対応といった方向性なども考えられます。

図表3 「モノ・コト消費」軸での分類(テラスモール湘南)

最後に、今回分析対象とした“TerraceMall湘南(テラスモール湘南)”は18年4月に、開業後、初めての大規模リニューアルが実施されていることから、SC GATEデータが持っているショップブランドの出退店履歴を用い、リニューアルの1年前である17年4月から現在までの業種構成の変化を可視化したものが図表4です。

17年4月段階で298店だったショップブランド数は、19年2月末までの22ヶ月中に、生活食-コト消費で4店、文化系娯楽-モノ消費で2店、嗜好食-モノ消費、ビューティー-モノ商品、その他-コト消費がそれぞれ1店の、合計9店増加したものの、減少側では住居品-コト消費で1店、運動系娯楽-モノ消費で2店、文化系娯楽-コト消費で3店、服飾品-モノ消費で11店と、合計17店減少した結果、現時点では差引8店減少した290店になっていることがわかり、どの区分でどの程度増加し、また、減少したかがわかりやすくなっています。

また、「モノ・コト消費」軸だけで見ると、モノ消費は4店の増加と14店の減少で差引減少数10店、コト消費は5店の増加と4店の減少で差引1店の増加と、モノ消費からコト消費へのシフトが伺える結果となっています。

図表4 「モノ・コト消費」軸での可視化(テラスモール湘南)

SCトレンド研究所が今回スタートした、ショッピングセンターでの業種動向をわかりやすく解釈できるショップブランドの分類手法について、ブラッシュアップを継続して、その結果を随時レポート化していくとともに、「ショッピングセンター 出店・退店動向レポート」(18年9月発刊のレポートの紹介はこちら)への反映も検討しています。

【本稿はSC GATEの2019年3月末時点データを用いて作成しています】

SC GATEとSC GATEのデータについてはこちらをご覧ください

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