The Institute of SC Trend

ポップアップストア・フードホールに続くSCのトレンドとは - 【吉田 けえな R・B・K】2018.6

 

ショッピングセンター(以下、SC)大国アメリカでは、近年ECの躍進がめざましいこともあり、 SCから核テナントである百貨店が撤退することから始まり、SC全体の閉店が余儀なくされ、廃墟化しているという記事がSNSなどで散見されるようになった。

しかし世界都市ニューヨーク(以下、NY)においては、ここ数年、新たに商業施設や百貨店開業が続いている。マンハッタンに百貨店がオープンするのは、1924年にサックス・フィフス・アベニューが五番街に移転して以来、約100年ぶりのオープンであり、今の時代のニーズに合わせた進化を模索する姿勢が垣間見られる。この4月初旬にはNORDSTROM MEN’S(ノードストロムメンズ)がついにマンハッタンにオープンしたばかりである。百貨店部分に関していえば、どれもがマンハッタンにある同百貨店の他店舗より小型化しており、大きめのセレクトショップという規模感である。また、新たな商業施設のオープン時には、だいたいどの施設にも、ポップアップスペースとオシャレに変身したフードホールやフードコートが展開されている。これは最近の日本の商業施設にも見られる傾向である。

では、こうした小型化やポップアップストア・フードホールの次なるトレンドはいったい何だろうか?

一つの鍵を握るのは「季節感」「通う習慣づけ」ではないかと考えている。ファーマーズマーケットなど、季節を感じさせ、思わず日常的に通いたくなるマーケットの存在、「マーケット」が旬を迎えようとしている。

 

世界のファーマーズマーケットからクリスマスマーケットまで ・・・ 世界各国の人気マーケットを紹介

ニューヨークの人気マーケット

NYでまず、マーケットと言われて思い浮かぶのは、ファーマーズマーケット。真っ先に名前があがるのは世界的にも有名なUnion Square Greenmarket(ユニオンスクエアグリーンマーケット)。1976年に数軒の農家さん達によってスタートしたが、現在ではピークシーズンには約140の農家や魚屋、パン屋、それから石鹸などの商品を販売するお店が集っている。月曜・水曜・金曜・土曜の週4日8:00-18:00まで開催されていて、曜日により店のラインナップが変化する。野菜や果物を中心に肉や魚介類、乳製品やパン、スパイス、花などが展開され、一般の人はもちろんレストランのシェフなどプロも買い出しに来るほど、クオリティが高い。NYではこの他にもブルックリンなど様々な場所でファーマーズマーケットが開催されていて、どこも活況を呈している。世界的にオーガニックや食の安全性が注目されるなか、旬の食材はもちろん、生産者から直接購入できることも安心感に繋がっているのではないだろうか。

 

サンフランシスコの人気マーケット

NYのファーマーズマーケットは基本、公園に隣接したスペースで行われているが、西海岸のサンフランシスコやロサンゼルスでは、商業施設の一角で行われているものが多い。有名なものといえば、サンフランシスコの食を集めた商業施設のFerry Building(フェリービルディング)前で行われているFerry Plaza Farmers Market(フェリープラザ・ファーマーズマーケット)である。このファーマーズマーケットは、92年に1回限りのイベントからはじまり、93年の5月から毎週の通年イベントになった。アメリカを代表するシェフとして知られるアリス・ウォータースをはじめ、こちらも有名シェフも足繁く通うことで知られ、毎週約4万人もの人が訪れている。このファーマーズマーケットや商業施設自体も、食を中心としているという特性もあり、地元住民が日常的に利用している(商業施設全体では年間約600万人が訪れる)。日本でも、都心型以外の商業施設では地元住民の日常的な利用を想定する際、参考になるケースではないだろうか。

 

東京の人気マーケット

東京でも週末は、表参道の国連大学前で開かれる、ファーマーズマーケットがここ数年かなり盛り上がりを見せている。3月最終週に行われた、全国各地31の酒蔵が集まった「青山酒祭り」では、あまりの混雑で移動するのが困難なほど人が溢れていた。毎月月初めの週末に行われる、古着ショップが集まるRAW TOKYO(ロウトウキョー)はオシャレな女性を中心に人気を集めている。すぐに海外視察が難しければ、ぜひ国連大学前のファーマーズマーケットを視察してみてほしい。生産者や作り手から商品の説明を聞き、会話を楽しみながら買い物をする姿を目にすることができるだろう。こういうシーンは、ECでは体験できないショッピングエクスペリエンスを提供できる。

 

ヨーロッパの人気マーケット

さて、ヨーロッパでは、まずオーストリア。ナッシュ・マルクト市場は、ウィーンで最も知名度が高い食品市場であり、ファーマーズマーケットではないが、似た感覚で楽しめる人気スポットになっている。日本でいう築地市場といった感覚だろうか。約120に上る店舗、レストラン、スナックなどが並んでいて、ウィーン、インド、ベトナムやイタリアに至るまで、世界各国の料理が味わえることもあり、市民はもちろん観光客にも人気のスポットになっており、毎週土曜日の蚤の市も人気だ。

 

ヨーロッパのもう一つの人気マーケット

そして、季節感を感じられるマーケットといえば、注目はクリスマスマーケット。特にドイツやオーストリアのクリスマスマーケットはそこに行くことを、旅の目的とする観光客も多い。ウィーンにある旧市庁舎前広場では、マーケット屋台だけではなく、屋外スケートリンクや小さな移動遊園地まで登場し、さながらアミューズメントパークで、老若男女問わず人気を集めている。ウィーンの各マーケットでは、オリジナルのスーベニアカップでドリンクが提供され、カップを返却すればデポジットが返金される。記念にそのカップを持ち帰る人も多く、スターバックスのマグカップやディズニーランドなどのように、思わずコレクションしたくなるデザインである。

 

このような季節感を感じられ、時には毎週やその季節になれば、あのマーケットでアップルサイダーやホットワインを飲みながら、お店を見て回る、それが子供の頃から生活の一部になっていれば、かつての百貨店の屋上遊園地や食堂のように、楽しい思い出と共に心に刻まれ、ショッピングセンターへの愛着も湧くのではないだろうか。そういった日々の習慣の一部になるような仕掛けが今後の商業施設の開発には欠かせないものになってくるように感じる。

サンフランシスコの“Ferry Plaza Farmers Market”にて

吉田 けえな / Keena Yoshida

松屋銀座の「東京生活研究所」にてコーディネイターを務めた後、雑貨ブランドのディレクター・バイヤーや株式会社R・B・Kにて商業施設を中心にコンサルティング業務に携わる中、国内外を飛び回る。
その後、渡米し、ニューヨークを中心に全米や欧州の商業施設やショップのリサーチやバイイング、デザインイベントの立ち上げプロジェクトなどへの参加など、ライティング、コーディネーション、マーケティングディレクション、コンサルティングなど多方面で活動している。

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