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都市型ショッピングセンター、成功のカギは何か?【後編】 - 【第1回SCトレンド座談会】

 

この記事は、ここ数年大きく変化している「銀座」「日比谷」に「丸の内」を加えた3つの街を素材に、都市型商業施設の「成功のカギ」について、ショッピングセンターや流通の専門家である、SCトレンド研究所の3名の顧問の方々に語っていただいた第1回SCトレンド座談会の後編となっています。前編はこちらをご覧ください。

 

座談会メンバーのご紹介

  • 株式会社R・B・K(リテールビジネス研究所)代表取締役 飯嶋 薫 様
  • 株式会社アトレ 顧問 東日本旅客鉄道株式会社事業創造本部アドバイザー 菊池眞澄 様
  • 立命館大学 経営学部教授 木下明浩 様

3名の顧問の方々の略歴はこちらのページをご覧ください
また、座談会の進行は、SCトレンド研究所 所長 金藤純子と研究所スタッフが担当しています。

 

前編で語られた主な項目・・・前編記事はこちら

  • 銀座が変わり始めるきっかけになったものは何か?
  • 変わり始めた銀座に丸の内の開発が拍車をかけた
  • ショッピングセンターの開業が進む銀座における老舗専門店の持つ意味とは
  • これからの銀座にとって重要なものは何か?

 

ショッピングセンター・流通の専門家から見た東京ミッドタウン日比谷の印象

――ここまで、銀座、丸の内と話を進めてきましたが、ここで、3月末に東京ミッドタウン日比谷が開業した日比谷に話を移そうと思います。木下顧問と菊池顧問は東京ミッドタウン日比谷をどのようにご覧になったでしょうか?

手前から帝国ホテル、日生劇場、東京ミッドタウン日比谷

木下:春休みシーズンですし、オープンしたばかりですから、やはり人が多いという印象でした。客層はビジネスマンもいましたが、中年のご婦人、若い女性など年齢層は多様だと感じました。まだ開業後間もないのでインバウンドはあまり多くありません。日比谷駅に直結していて、地下でも有楽町まで行けるので、多様な客層が来やすいのでしょう。

お店はどこも満員なところが多く、和菓子の店“鈴懸”やその隣の“RINGO”は行列ができていました。3Fの“HIBIYA CENTRAL MARKET”も、昭和レトロな雰囲気をうまく作り出していました。価格帯は銀座とは違い、以前、研究所が公開したNEW YORKの記事(記事はこちら)に書かれていた「上質なカジュアル」と言えばいいのでしょうか、非日常ではあるが銀座価格ではない使いやすい価格帯になっていると思います。

あの立地はもともと、映画館、劇場、宝塚歌劇、ホテルなどがあった歴史文化ゾーンですし、日比谷公園もあります。また、そのような様々な要素を持つ場所であれだけの区画をまとめ、ビジネス要素、文化的要素、公園の景観などを組み込んだ素晴らしい施設になっていると思います。丸の内のオフィスゾーンからの拡がりなど、伝統的な流れから新たに立地を創造しています。世界の中心、東京でデベロッパーが持っているノウハウ・力を感じました。

編集部より・・・このご発言の中で触れられている“HIBIYA CENTRAL MARKET”については、その開業裏話などを別の記事でご紹介予定です。

手前が東京ミッドタウン日比谷、奥が日比谷シャンテ

菊池:3つの地区いずれもそうですが、日本の明治時代以降の近代化の中で象徴的な街です。銀座は風俗、日比谷は芸術・文化、丸の内はビジネスという面で、その時代時代に応じてリードしてきた街です。一過性ではなくある時代の価値観を人々に、永続的に発信してきました。ミッドタウン日比谷で一番感じたことは、日比谷地区の伝統や文化というところをしっかりと取り込もうとしていることです。

ショッピングセンターは街に開かれているという事が大事だと思っています。大きな入口、その前の広場などが、それを実現しています。日比谷地区では、もともと日比谷シャンテが代表的な施設でしたが、ミッドタウン日比谷の建物はそれを意識して曲線を使い、入り口の雰囲気、色の合わせ方、ちょっとレトロっぽいところなどをうまく取り入れ、品よく作っています。

日比谷公園側も、昔の三進ビルを意識し、同じ床材を使うなど、周りにしっかりと合わせようとしているところが高く評価できます。時代の「刺激」に合わせるのではなく、大人、年齢層の高い人が来ていた頃の日比谷のアイデンティティーをしっかりと引き継いでいることが素晴らしいです。

東京ミッドタウン日比谷、開業にかかわる逸話

――飯嶋顧問は東京ミッドタウン日比谷のプロジェクトにも参加されたとお聞きしましたが?

飯嶋:4年前に三井不動産さんから聞いたのは、GHQ、鹿鳴館、帝国劇場があった文化と歴史の中心地である、日比谷から内幸町までを三井不動産さんが街づくりし、内幸町から虎ノ門は森ビルさんが開発するという話でした。

東京ミッドタウン日比谷については、コンセプトづくりから参加していました。プロジェクトの中で、一番印象的だったのは、隣接するビルにプレゼンテーションルームを作ったことでした。日比谷公園から皇居までを見渡せる部屋です。そこでのプレゼンテーションを通じで、入居してほしい企業の方に「ここで仕事ができるのなら、ぜひ入居したい!」と思わせることができました。それが良かったです。プレゼンテーションルームはこれからの商業施設には大事だと思っています。

 

――東京ミッドタウン日比谷にはホテルの計画はなかったんですか?

飯嶋:三井不動産さんは、当初ホテルも計画したそうです。ところが、このエリアは有事の際の空路になっているため高さが確保できません。ホテル分のスペースを確保できず、断念しました。ホテルは断念しましたが、オフィスフロアは順調だと聞いています。東京ミッドタウン日比谷のオフィスフロアは全部埋まりました。外資系の会計事務所、不動産投資企業等が入居し、旭化成の本社が移転してくることも発表されています。

オフィスは環境が重要で、日比谷公園、皇居が見渡せると価値が高くなります。丸の内も皇居が見える位置にありますから、オフィスには最適です。ところが銀座はオフィス、特に大きなオフィスには向いていないと思います。実は、GINZA SIXのオフィス棟は、まだ全ては埋まっていないと聞いています。銀座は、買い物には良いですが、大きなオフィス需要には適していないのでしょう。その理由の1つは、環境、景観ではないでしょうか。

菊池:大きなビルを開発して一部分をオフィスにするというように、安易に考えるのではなく、働く人の心理面や入居対象企業の思いなどを汲みとって計画する必要があります。

 

――商業ゾーンはどのような考えかたをされたのでしょう

東京ミッドタウン日比谷から日比谷公園、皇居方面の展望

飯嶋:まず、もともと日比谷には日比谷映画という要素がありましたから、シネマコンプレックスとして、六本木ヒルズでフラッグシップとなっていた東宝シネマを、東京ミッドタウン日比谷に出店してもらいました。その一層上のフロアには、会員制とフリーなカフェスペースを2つ用意して、人が集まれる場所としました。銀座の喧騒から逃れてくる富裕層向けの飲食店も用意し、一方で地下はもっとカジュアルなフードコートとベーカリー等の食物販で構成しました。

基本的にはショッピングセンターに出店しているショップだけではなく、路面店の中でも魅力的なショップに出店してもらおうと考えました。その時もやはり、プレゼンテーションルームが効果的でした。プレゼンテーションルームでは、時には夜にウィスキーを飲みながら商談することもあったようです。

あと、ユーティリティー面では、トイレとドレッシングルームを見て欲しい。女性トイレだけでなく、男性トイレにも豪華なドレッシングルームがあります。

菊池:ゾーニングがよくできています。日比谷公園側にテラスを作って、一見のお客様も取り込み、しかも飽きさせないようにしています。そうした一見のお客様が落ち着いてきたとき、どういった効果が出せるかがポイントになりそうです。

飯嶋:実は、私は以前、日比谷シャンテに店を出していました。その時は帝国ホテル、劇場等に来る狭い商圏のお客様中心で、ここでやっていけるのか?という印象がありました。でも、今回、地下道を作り、日比谷シャンテと東京ミッドタウン日比谷が一体化でき、相乗効果を発揮できそうです。

 

――将来計画のようなものも想定されているのでしょうか?

飯嶋:オーストリアのウィーンで、国道をまたぐペデストリアンデッキをレストランにしたショッピングセンターを見たことがあります。東京ミッドタウン日比谷のプロジェクトの中でそれを紹介すると、日比谷公園に向かって日比谷通りに橋をかけデッキを作って公園と一体化しようという案ができました。ただ、日比谷通りは、国会議事堂、皇居への幹線道路のため、有事の際に向けて構造的な条件が厳しいようで、いったんこれも断念しました。

後日談ですが、オリンピック後、ミッドタウンと公園をつなげるデッキ構想が復活する可能性もあるようです。また、帝国ホテルもオリンピック後に建て替える計画があるようで、それも実現すれば、劇場、ホテル、公園などを巻き込んだ、独特な存在感のあるエリアになるのではと考えています。

東京ミッドタウン日比谷の開業を踏まえて、銀座、丸の内、日比谷の未来を語る

――開業した東京ミッドタウン日比谷の影響も踏まえ、銀座、丸の内、日比谷の未来についてのお考えをお聞かせいただけますか?

飯嶋:まず、銀座についていえば、ファッション系ショップというよりも、今後は飲食系のビルやショップが、特に銀座の中心部というよりは周辺に拡がっていくと思います。ロンドンやニューヨークなどの事例を見ると、そういった動きになっています。

現実に、休日に歌舞伎座に行くと、食事をするところが足りなくて、銀座の中心部まで行かざるを得ませんから。一方、丸の内や日比谷を開発しているデベロッパーに伺うと、東京には国際的オフィスがまだ足りていない、特に、国際的なコンベンションルームが不足しているという話です。だから、今後丸の内から日比谷に、海外からの需要に応えられるオフィス要素を供給していくそうです。

こういったオフィス開発の流れは、ニューヨークのハドソンリバーの開発に近い。ニューヨークではハドソンリバー周辺にオフィスと住宅ができることで、ミッドタウン地区の商業施設が減り、代わりに、オフィスと住宅ができたハドソンリバー周辺に、“Barneys New York”(米国の高級百貨店)などの小型版が出てきています。オフィスと住宅が活性化した時に、そのエリアに合わせたショッピングセンターができるという流れです。すでに、日本橋あたりはそういった動きになっていますし、今後さらにこの流れは加速するだろうと思います。

下段 航空写真データ: Google Earth

菊池:私は3地区の連携が重要になると考えています。おそらく、丸の内と日比谷は、それぞれの歴史を背負いながら、それを活かしつつ革新していけるでしょう。重要なのは銀座がどのようになっていくかです。というのは、銀座は丸の内や日比谷にも影響を与えるからです。丸の内・日比谷に来た人が銀座でも楽しめるか、3つの街全体で楽しむことができるか。例えば、日比谷来街者にとって、日比谷公園に加えて、銀座がもう一つの楽しみになれるかどうかが大事です。そのためには銀座の良さ、昔からの記憶、これらがしっかり残っている状況でいてほしいです。

そうするとこの3地区はバランスよく、継続的に発展をし、維持できるのではないかと思っています。銀座の街がどうなるかは、利用するお客様のイメージが左右します。つまり、管理運営しているオーナーの責任が大きくなります。3つの地区とも、一時的な流行に流されずに、それぞれの地区の「良さ」を守りながら、革新を続けていけるかどうかがポイントになります。新宿西口のように、目先のお客様に流されるような状況になるのはよくありません。銀座が銀座であり続けるために、制度面も含め3地区で議論し、次の世代に引き継ぐことが必要です。

木下:銀座は、お客様を、3層、4層ぐらいの層に分けて考えなければと思います。まず、銀座は便利な位置にある。それが大きな魅力です。銀座にアクセスしやすい江東区、中央区、港区などは、人口が増加しています。銀座に30分で来られる範囲の人がすごく増えている。そういった後背地から日常的に銀座を使える人もいますし、時間をかけて買い物に来るお客様も、日本全体や世界からの観光客もいます。このように銀座の利用者は多層的です。豊かな後背地を持ち、しかも、観光需要というマーケットも持っているので、やり方によっては銀座は今以上に人を引き付けられます。

菊池:開発の方向性は、オフィスというよりは、マンションのほうがいいのではないでしょうか。住民を増やすと、その街を守ろうという意識も生まれます。

飯嶋:マンションができるとカフェやレストランなども増えてきて、街づくりが進みます。成功した例の一つが豊洲の開発です。豊洲は銀座に近く、もともと工場跡地なので開発が進みやすかったのです。それに比べ、日本橋界隈はそういった大きな土地ではありませんが、小さい土地をまとめた開発がうまくできています。ところが、銀座のように小さな土地で、しかも権利が入り組むと難しくなります。銀座は、今、京橋の方向に開発が進んでいて、新橋の方の開発が遅れています。大手不動産会社が所有していないエリアになっていることが原因のようです。

木下:丸ビル、新丸ビルは、銀座のように多くはありませんが、オフィスで働いている人ではない人も来てはいました。また、開発後、土日に歩いている人が2倍以上になったとの記事もありますから、専門家から見ると十分ではないにせよ、丸の内の街づくりは一定の成果は出たといえます。

銀座については広さがあり、中心地とその周りはいいが、少し離れた周辺地区では開発が必要にもかかわらず、大資本による開発が難しい権利状態から、一朝一夕に整理できないのでしょう。資本の論理だけでない形で、しかも金銭的なメリットが出る形で動かせるか、大手の地主がいない場合の開発の難しさを感じています。

菊池:それぞれの地域の役割、あるべき姿にお互いが関連していることを前提にした議論がないと、リアルなお客様を動かせません。丸の内だけ、日比谷だけで完結させようとするのではなく、3地区全体、もっと言えば交通網も含め大きく捉えて考えていくことが重要です。

例えば、丸の内に当初は、洗練され上品でありながらお手頃な、女性向けアパレルの“NATURAL BEAUTY BASIC”がありましたが、今はありません。これは、丸の内で働く女性は、どこの“NATURAL BEAUTY BASIC”で買い物をするのか、というように丸の内だけで考えられる話ではありません。オフィスの多い地区にもかかわらず、休日にイベントをやって集客するというのではなく、オフィスの利便性やONの時間に合わせ、自然な形で街を活かすことを考えていく必要があります。日比谷であれば、オフィスに加え、劇場、公園などを活かすといった考え方です。

「成功のカギ」はお客様の心理、行動を理解した街(ショッピングンセンター)づくり

――銀座のような路面店も多い地区での都市型ショッピングセンターの開発では、路面店との共存、例えば飲食を例に出すと、銀座近くのコリドー街というポピュラーなところもあれば、老舗飲食店も、また、ショッピングセンターや百貨店にも飲食店があり、それぞれが異なった価格帯で共存しようとしていますが、こうした状況はどのように考えていけばいいのでしょう。

菊池:これは、お客様がそれぞれの使い方に違いがあることに気づき、使い分けるようになったことが重要です。外食はいろんなところに行くのが楽しいんです。ですから、例えば、百貨店の高いレストランの場合、どんなに装飾しても百貨店では面白くないという感じが残ります。それはショッピングセンターでも同じで、例えば駅ビルの飲食フロアを全面リニューアルしても成功したという話はあまりありません。駅の上の飲食はその程度だとお客様が思っているからです。

恵比寿を例にとると、飲食街を作った時は評価が高かったのですが、近頃は体のいいフードコートとして見られているのかもしれません。もちろん、これがすべてではありませんが、あそこで食べればまずまずの食事ができるという安心感が集客につながっている面が見られます。特に食の世界で顕著ですが、あるお店がどういうお客様にどういう形で支持されているかということと、そのお店がどこで商売をするべきかはワンセットで考える必要があります。昔は、百貨店の食堂では優秀なシェフが新しい料理を提供していて、年に1、2回しか食べられない場所でした。百貨店の食堂という場所そのものに価値がありました。でも、今はお客様自身が変化し、お客様のニーズや気持ちの変化に合わせて、使い分けをするようになってきました。

木下:懐石料理の名店が丸ビルにもありますが、そこの賃料を考えた時に、「料金に占める材料費の割合はどうなっているんだろう」「少し古くても、飲食ビルに入っているお店の方がコストパフォーマンスはいいのではないか」なんて考えてしまいます。

そうなると、ショッピングセンターが、大きな投資をして、大きな上物をつくり、公共スペースをつくっている意義が問われてくるのではないでしょうか。ショッピングセンターの店舗面積ありきではなく、適正規模をシビアに見る必要が出てきています。東京ミッドタウン日比谷はコンパクトで、全体をざっと見ることができ、適正規模になっていると思います。

飯嶋:確かに、今、言われたような適正規模という考えが、都市型に限らず郊外型も含め重要になってくると思います。インターネットを利用したオンラインショッピングの普及により、生産者も小売りに進出し、誰でも売ることができるオールリテールの時代になりました。もう「どこよりも大きく、どこよりも営業時間が長く、どこまでも安く」というような考えはリアル店舗では通用しません。その結果、これから都市型のショッピングセンターはおそらく小型化していきます。リアルの商業施設の存在意義がどこにあるのか、何で勝てるかを考え、しかも、それを環境に合わせたコンセプトとしてしっかりと持つことが必要です。

菊池:適正な規模は重要です。恵比寿を作った時、思ったよりも売れました。それは、恵比寿が適正な規模だったからです。実際に滞留時間を測定してみると、購入する人は20分ほどの滞留時間でした。一方、購入しない人は7分ほどですが、館全体をよく見ています。「短い時間だから今日も寄ってみよう」と、買う予定はないけど、寄りやすいから寄ってくれたんです。お客様が多く寄ってくれるようになると「思い付き消費」が重要になってきます。特に購入する予定がないのに、たまたま立ち寄ってみたら、面白い商品があったので、ついつい購入してしまう、というような形です。

ところが、そうなってくるとお店側も、常に新鮮なディスプレイが求められます。例えば、同じ商品を1週間もディスプレイしていると、お客様は売れていないと思って購入しなくなります。こんな、ショッピングセンターに立ち寄るお客様の心理や、ディスプレイを見て思わず購入してしまうお客様の消費行動などを突き詰めていく必要があります。

飯嶋:滞留時間は重要な要素です。これは都市型ショッピングセンターの例ではありませんが、アメリカで多くの商業施設を開発運営しているWestfield社に成功の理由を聞いたことがあります。全米のショッピングセンターの滞留時間の平均は80分なのに対し、ポップアップストア(数日〜数週間のみ出店する期間限定の店舗)や、大型フードコートなど、お客様への仕掛けを組み込むことで、Westfield社は120分になっていると言っていました。日本のショッピングセンターに欠けている機能の一つは滞留時間の明確化にあると思います。

木下:都市型ショッピングセンターの適正な滞留時間は、ショッピングセンターによって異なると思います。自分の顧客はどのような滞留時間で、どのような行動をするのか、これを意識する必要があります。

菊池:それに加え、もう一つ重要なのは、お客様はどんどん変化していくということです。恵比寿でも開業から20年経ってお客様は大きく変わっています。最初は流動客がほとんどで、閉店時間を延長したら食料品が売れると思っていたら、そうではなくファッションが売れました。でも、16年に恵比寿が住みたい街ランキング(株式会社リクルート住まいカンパニー、東京都港区が実施)で2年連続1位になったように、街の変化でお客様も変化し、今は、客層が時間によって変わるようになりました。その結果、以前は夕方以降に売れていたファッションが、今は午前中に子ども連れの親が来て買い物しています。マーケットの変化を常にチェックしながら、どのような打ち出し方をしていくかを、どうテナントと共有していくかが重要なんですね。

しかも、それを永続的に進められるような組織運営をする必要があります。お客様が変化していく中で、駅ビルなら、駅とは何かを真剣に見つめ、どうすればいいかを考え続け、変化し続けてきたんですね。それが今のatre恵比寿ですし、また、LUMINEさんもそうなんだと思います。

ショッピングセンター運営におけるデータの重要性

――滞留時間とお客様の変化が重要だと指摘がありましたが、SCトレンド研究所の母体である株式会社リゾームが、滞留時間などお客様の行動やマーケットの特徴を可視化できるサービスの提供をスタートさせています。こうしたデータの有効性についてはいかがお考えでしょうか?

編集部より・・・リゾームが提供するお客様の行動を可視化する「流動 RYUDOU outside」サービスについてはこちら、マーケットの特徴を可視化する「マケプラ “Market Platform”(SC GATEオプション機能)」サービスについてはこちらをご覧ください。

菊池:お客様の行動やマーケットの特性がデータとして可視化され、目で見られることが大事です。もちろん現実を観察することも重要で、観察結果とデータが一致すると、説得力が高まります。それをテナントと共有できれば、テナントをその気にさせられます。

出典:リゾーム × ipoca「流動 RYUDOU outside」

飯嶋:テナントからすると、データがないと、勝手に、入館客数が少ない、滞留時間が短い、ショッピングセンターなんだと決めつけてしまい、やる気が出にくくなるんです。でも、デベロッパーから入館客数や滞留時間が増えているというデータを見せられると、ショッピングセンターの集客力を言い訳にできなくなります。

菊池:ただ、最近思うのは、観察、つまり自分の目で見て確かめる行為ができる人が、昔に比べて減ったということです。観察とデータの組み合わせが重要なのに、デジタルな分析による先入観だけで、決めつけてしまう。データだけに合わせて考えてしまうんです。しかも、それを、デベロッパーはテナントに押し付けようとする。しかし、お客様と接しているのはテナントですから、お客様の行動や変化を最もよく知っているのはテナントです。現実のお客様はもっと複雑なんだということを、ショッピングセンターを運営する側の人が理解する必要があります。

飯嶋:リアルショップの本当の意味がそこにある。そこがわからないから、ショッピングセンターを運営する側も事務のコストを下げようとするばかりで、テナントとデベロッパーの相互信頼に基づくFace to Faceのショッピングセンター運営をしなくなってきています。観察とデータを活かし、Face to Faceの運営がうまくできないデベロッパーは将来的に、存続が厳しくなるでしょう。

 

編集部より・・・リゾームが提供するお客様の行動を可視化する「流動 RYUDOU outside」サービスについてはこちら、マーケットの特徴を可視化する「マケプラ “Market Platform”(SC GATEオプション機能)」サービスについてはこちらをご覧ください。

編集部より・・・SCトレンド座談会は、年に2回程度、時宜にかなうトピックを素材に開催予定となっています。開催時期が決まりましたら、お知らせいたします。

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