SCトレンド研究所

「ショッピングセンター 出店・退店動向レポート 2018」にみるSCトレンドとは【後編】 - 【第2回SCトレンド座談会 ~ リゾームユーザー交流会2018より】

「ショッピングセンター 出店・退店動向レポート 2018」にみるSCトレンドとは【後編】 - 【第2回SCトレンド座談会 ~ リゾームユーザー交流会2018より】
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この記事は、SCトレンド研究所を運営する株式会社リゾーム(Webサイトはこちら)が、東京・大阪で開催する“ユーザー交流会”で行われた、研究所の3名の顧問によるパネルディスカッションを、座談会形式で記事化したものの後編となります。(前編はこちら
テーマは、「『ショッピングセンター 出店・退店動向レポート 2018』(18年9月3日発刊、レポートのご紹介、ご購入はこちら)にみる、ショッピングセンター業界のトレンド」となっています。

パネルのご紹介

  • 株式会社R・B・K(リテールビジネス研究所)代表取締役 飯嶋 薫 様
  • 株式会社アトレ 顧問
    東日本旅客鉄道株式会社 事業創造本部 マーケティングアドバイザー 菊池眞澄 様
  • 立命館大学 経営学部教授 木下明浩 様

3名の顧問の方々の略歴はこちらのページをご覧ください
また、ディスカッションの進行は、SCトレンド研究所 所長 金藤純子と研究所スタッフが担当しています。

記事は、以下のように前編(記事はこちら)と後編(この記事)の2部構成となっています。

前編で語られた主な内容・・・前編記事はこちら

  • 「増えるSC、減るテナント」・・・その背景は?
  • 新規開業ショッピングセンターの差別化のカギ
  • 既存ショッピングセンターで増える業種とその背景

後編(この記事)で語られる主な内容

  • 新規ブランドは足元から・・・新規ブランド探しのポイント
  • 百貨店がSCに寄り添う!?
  • 今後のショッピングセンターに求められるもの

新規ブランドは足元から・・・新規ブランド探しのポイント

――続いて、「ショッピングセンター 出店・退店動向レポート 2018」の本編Ⅴでは、2017年4月~18年3月にショッピングセンターに初めて出店した新規ブランドについて報告しています。
その中で、新規ブランドが登場したショッピングセンターの所在地方と、その新規ブランドを生み出した運営企業の所在地方の関係を見たものが図表4です。意外なことに、ショッピングセンターに登場した新規ブランドの70%が、足元の運営企業が生み出している、すなわち「新規ブランドは足元から」誕生するということが見られました。
こうした事象については、どのようにお考えでしょうか?

図表4 新規ブランドが初出店したSCが所在する地方と、そのブランドの運営企業が所在する地方の関係

地元を知っているのは地域ブランド

木下:これには2つの理由があると思います。
ひとつ目は、基本的に地域ブランドというものをいきなり東京に持って行っても難しいということです。まずは地元のショッピングセンターに出店し、地元の人に楽しんでもらう。もちろん、食品の場合であれば、鮮度といった点もあると思います。
新規ブランドは足元から・・・新規ブランド探しのポイント二つ目は、地域ブランドの方が地元のことをよく知っているということです。人間の生活、社会的生活、個人的生活の豊かさは、地域の文化や歴史、その地域の風習・習慣などに依存して形成されていますから、そこから抜け出すことは簡単にはできません。まずは、地域のものをよりよく知り、より消費し、より大事にしたいと思う心理が働くのです。
これだけ標準化やチェーン化が進むなかにあっても、特に食の領域、例えば、醤油や味噌は地方ごとに銘柄があり、また、ソースだってエリアで違いがあるというように、歴史や文化に根差した、あるいはそこの風土が培った地域とは、切り離せないと思います。
ショッピングセンターも画一的ではない施設づくりといった視点が求められているのではないでしょうか。

ブランドそのものが、生まれた地域と深く関わっている

菊池:元々、ブランドは製作者の思いを込めた商品が、使用者の心地よい体験と伴に口コミで広がることによって生まれます。ところが、評判が地域的に拡大し、ブランド名だけが独り歩きするような状態になると、ブランド=記号という状況が生まれ、ブランドの本来の意味が失われ衰退していくというのはよくあることです。このことは、ブランドの本来の姿は、そのブランドが生まれた地域と深く関わっていることを示しています。

新規ブランドは足元から・・・新規ブランド探しのポイントある地方駅ビルの例を紹介すると、その駅ビルは新幹線の開通に伴いオープンしました。コンセプトは東京のブランドを中心に構成した駅ビルでした。東京に行かなくてもここで買えますということです。そのため、地元で評判の高い蕎麦屋には退いてもらいました。実際にオープンすると、最初はよく売れましたが何年も経たないうちに売れなくなり、どう再生するかが問題となりました。その時考えたのが、昔から地元に根強い支持のある地産地消の食を主軸に据えて再生するというものでした。その代表として、一度退いてもらった地元の蕎麦屋をもう一度誘致するということにしました。時間はかかりましたが、再誘致がひとつのきっかけとなり、再生することができました。
「新規ブランドは足元から」という事象の一例だと思います。

重要なのは新規ブランドの「発掘」

飯嶋:新規ブランドを考えるのであれば、インターナショナルブランド、ナショナルブランド、ローカルブランド、という3つを考える必要があります。
ショッピングセンターにとって、新規ブランドの発掘は非常に重要です。

ひとつ新規ブランド発掘の例を紹介すると、尾道にPARIGOT(パリゴ) という昔からのラグジュアリーを輸入している専門店がありました。それを見つけた、岡山のショッピングセンターの担当者が口説いて、岡山のショッピングセンターに出店してもらい大成功しました。その大成功を見た大都市の商業施設担当者が、また口説いて、岡山から最終的に横浜や有楽町に出店してもらったという例があります。こうした、発掘を続けることが重要です。探せばファッションだけじゃなく、「食」もいろんなものがまだまだあるはずです。

百貨店がSCに寄り添う!?

――最後に、「ショッピングセンター 出店・退店動向レポート 2018」の本編Ⅵでは、2018年3月末時点のブランド運営企業の状況について報告しています。
この中で、複数業種を運営する企業の比率が、1年前の17年3月末からどの程度増加したのかを見た結果が図表5です。そうすると、百貨店業種を運営する運営企業による他業種店の運営といったところの伸びが顕著だということが明確になりました。
これはどのように考えればいいのでしょうか?

図表5 複数業種のブランドを運営する運営企業の運営企業数構成比の前年増減

百貨店による専門店開発は、今に限ったことではない

飯嶋:こうした百貨店による専門店出店は、今に限ったことではありません。ずっと、そうした動きをしていて、逆に今は、一番少ない状態だといえる状態です。
具体的には、過去にファッションの専門ブランドや食品のブランド化も試みましたが、実は、みんな失敗しました。昨今、話題になっている“ISETAN MiRROR”とか“Fruits GATHERING”など、コスメだけがうまくいったという状況です。

百貨店がSCに寄り添う!?百貨店の他業種専門店展開の一番の問題は、高コスト構造にあります。百貨店にアパレルが納品する場合と、ショッピングセンターに出店する場合では条件の差は2倍前後です。
百貨店のこれからを考えると、地方の百貨店と大都市以外はショッピングセンター化しないと勝ち残れないのに、ショッピングセンター化には高コスト構造という大きな問題が残っています。

情報化の進展で百貨店の「包装紙」が形骸化

菊池:百貨店が苦戦を強いられているというのは、経営上のいろいろな問題があってという話もありますが、私は、世の中の情報化の進展が最も大きな原因だと考えます。

百貨店は昔からその包装紙に価値があるといわれてきました。確かにギフトや贈答品では意味があるのですが、時代とともにお客様が自分で商品などの情報を入手できるようになったということが、百貨店の包装紙の価値を形骸化させてきました。情報が入手できないころファッションのブランドはあまり知られていませんでしたから、百貨店の選択眼に任せるしかなかったものが、ファッション雑誌が登場したころから、自分で情報を入手してそのお店に行けばいいということになりました。マーケティング的にはそれが百貨店の衰退につながったと考えています。
しかし、百貨店という業態はそうなりましたが、業種によっては長年培った専門的な知識とノウハウを生かして専門店として独立して生きていくということは十分考えられます。例えば、化粧品がよい例だと思います。
ただ、その場合、包装紙に代表される「記号」を前面に押し出し、商品構成や店舗デザインを統一化するなどして多店舗展開するというようなことは避けなければいけません。当然ですが、立地条件、ショッピングセンターのタイプなどによって売れる商品も売り方も違います。その違いを感じ取って柔軟に修正できるかが課題だと思います。

専門化とは、商品をより深く研究し、より繊細に売っていくこと

木下:現在の小売りの大きな流れは専門化です。個々のテナント、あるいは売り場のゾーンごとに、より深く商品を研究、深掘りして、より繊細にものを売っていくという流れです。
例えば、昨今では小売業者自身が自ら仕入れるものについて、生産の背景、デザインについても関わるようになってきているという流れがあります。食品スーパーでも、やはり生産の履歴や、品ぞろえする際にどういう地域の特産なのかをよく調べたうえで、その立地に対応した品ぞろえをしています。
でも百貨店のような大型の品ぞろえがある業態では、そういう対応が現実的に難しくなってきているのでしょう。その結果、百貨店を個々の分野に分解して、分野ごとに立地に対応したショップの編集、その立地にある消費者の属性や状況により個々の売り場を編集していかざるを得なくなっているのだと思います。

今後のショッピングセンターに求められるもの

――これまで「ショッピングセンター 出店・退店動向レポート 2018」で見られた、この1年間のショッピングセンターの動きを5つのテーマで語っていただきましたが、最後にまとめとして、ショッピングセンターのこれからということについてご発言いただきたいと思います。

元気なテナントを維持して、生活基盤のプラットフォーム化を

飯嶋:私は2点あります。
ひとつは、これからのショッピングセンターは、生活基盤のプラットフォーム化が必要です。もちろん、そこにはeコマースやメルカリのような「買い」「売り」もあるという双方向のサービスなども含めたプラットフォーム化です。でも、お客様がリアルで何を買って、eコマースで何を買って、それをすべて把握できるわけではないですから、売上を把握して賃料を決めるというビジネスモデルそのものを変えざるを得なくなるでしょう。その答えが固定家賃なのかは定かではないですが、そういう形でのビジネスモデルの変換というのがこれから必要になってきます。

もう1点は、テナント疲弊の問題です。テナントが元気であって、はじめて楽しく魅力があるショッピングセンターが実現するので、営業時間、休館日など営業面、また、テナントに対するテナントマネジメントをデベロッパーがテナント目線で実践できるかどうかが重要です。

リアルな体験や楽しさとバーチャルなネットを融合させる

今後のショッピングセンターに求められるもの菊池:今後ますます急激な情報化が予想されるなかで、バーチャルに対するリアル、あるいはバーチャルとリアルの融合という視点は最も重要だと考えています。具体的には2点あります。

その一つが食です。食はリアルな体験以外はありません。情報化の進展により、食をテーマに色々な業態が生まれてくると思います。フードホールや他の業種との組合せによる新業態などもその例です。人々のリアルな生活スタイルは食を中心に変化していくと考えています。

もう一つはバーチャルな世界を体現できるような新しい形の店舗です。具体的には、インターネットとリアルな消費行動とを結びつけるような業態です。ネットとリアルは消費者が最も上手に使っているように思います。その使い方もどんどん進化しています。インスタグラムなどのSNSを使ってショッピングセンターの中での楽しさや、魅力的な商品そのものを発信してもらうといった手法も必要になってくるでしょう。

これからのショッピングセンターは、人々のリアルな消費行動に着目したマーケティングにより作り上げることが最も重要です。このようにできたショッピングセンターを、私は、『インスタレーションとしてのショッピングセンター』と呼んでいます。個々の人々の生活スタイルによって、さらに時代、場所によって異なる消費行動を多角的に観察・分析し、利用者が次々と新しいイメージをふくらませることが出来るような表現が求められています。

デベロッパーとテナントが協力して消費者との協奏を実現

木下:ショッピングセンターのミッションは、それぞれ、おかれているショッピングセンターごとに違います。そのミッションを決めるときに、どのような人がどのようなグループで、どのようなコミュニケーションを形成しながら、使っていくのかを明確にすることが重要だと考えます。

ショッピングセンターを利用する消費者は、孤立した消費者ではなく社会生活の中での消費者で、消費の経験自身が消費者間で共有されています。ですから、単に消費し、単に時間を使うだけではなくて、消費者は社会生活をどのような人々とどのように形成しているのか、すなわち、どのようなコミュニティが形成されて、どのようなコミュニケーションが行われるのかを把握することが重要です。その上で、このショッピングセンターではどのような買い物、あるいはサービスの消費を行うかというストーリーを築きながら考えていくことが必要です。これは別の表現をすれば、ショッピングセンターのデベロッパーや開発運営会社とそこに出店するテナント、また、場合によっては周辺のショッピングセンターや商圏環境まで含めて、消費者との協奏が実現できるようショッピングセンターをデザインし、構想し、運営し、検証していくことが求められると思います。
その結果、郊外については、あらゆる顧客グループに対応できる大型・超大型のショッピングセンターが地域一番店として中心になっていくでしょう。一方、都市では小型のショッピングセンターの集積の中から、地域一番のショッピングセンターが誕生していくことになります。ただ、都市部では商業人口が多いですから、どういう顧客・グループに、どのような楽しみ方を、どのような切り口で提供するのかという差別化の軸の選択肢が多く、ショッピングセンターの構想力と実際の具体的なテナント編集のところで、差別化が実現でき、かつ、顧客の購買行動に適うことができれば、個々の生き方も可能性があると思います。

また、ショッピングセンター自身は、採算性の観点から、適正規模を強く意識せざるを得ない状況にありますから、具体的な消費行動を踏まえたショッピングセンターの姿というのを、リアルに具体的な提案・提供物として消費者やコミュニティに伝えられるかということが、問われていると考えます。

※「ショッピングセンター 出店・退店動向レポート 2018」にはこの記事で紹介しているデータだけでなく、ショッピングセンターとそこに出店するショップを、様々な角度から分析した結果が収載されています。


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