SCトレンド研究所

既存店業績不振でも積極出店が続く - 【飲食大業種四半期SC出退店ランキング】

2018年10月~12月期の飲食大業種のSC出店ランキングを報告します。

この出退店ランキングは、この期間中にショッピングセンターに出店、もしくはショッピングセンターから退店したブランドについて、出店数と退店数から差引出店数を算出し、その上位から20位までのブランドを表示したものです。ランキング方法や詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

飲食大業種のSC出退店ランキング - 【2018年10月~12月期】

積極出店が目新しさを失わせた可能性も

2018年10月~12月期の飲食大業種のSC出店ランキングは図表1のとおりとなりました。

出店ランキングでは、前四半期に続き“いきなり!ステーキ”が、差引出店数11店で1位となりました。
前四半期の記事(記事はこちら)で危惧していた出店の減速はこの四半期では見られていません。同ブランドを運営する株式会社ペッパーフードサービス(東京都墨田区)の発表では、2018年度(18年12月末まで)の出店実績209店に対し、19年1月からスタートした2019年度についても210店の出店を計画しており、引き続き強気の出店が続くと思われます。
ただ、本稿執筆時点で最新の19年2月の既存店業績は、売上高24.9%減、客数17.2%減、客単価9.2%減と、大きく前年割れしています。その背景には、前四半期に紹介(記事はこちら)した値上げの影響もあると思われますが、昨今では、店舗数の増加に伴い目新しさを失ったことなども指摘され始めています。

2位は差引出店数7店の“Saizeriya”となりました。
このブランドは、過去の出店ランキングを振り返ると、差引出店数3~4店でランキングに入っていることが多かったのですが、この四半期は大きく出店数を増やすとともに、上位ランクに入ってきています。同ブランドを運営する株式会社サイゼリヤ(埼玉県吉川市)のWebサイトでは「店舗展開の戦略は時代に合わせてロードサイド型から、駅前やショッピングセンター内や都心への出店とシフトさせている」との店舗開発部長のコメントも紹介されています。

出店ランキングの3位は、差引出店数6店の“Starbucks Coffee”となりました。
同ブランドを運営するスターバックス コーヒー ジャパン 株式会社(東京都品川区)は、19年2月にオープンさせた「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」が話題になっているほか、同じ“Starbucks Coffee”ブランドでも、デザインコンセプトを変化させた店舗なども積極的に出店させています。

また、今回のランキングでは12位(差引出店数2店)に、“SNIDEL”や“gelato pique”といったファッション業種を運営する、株式会社マッシュホールディングス(東京都千代田区)が運営する“gelato pique cafe”が入っています。
このようなファッション業種を運営する企業による「食」への進出の動きは、前四半期の食品業種のランキングでも、株式会社ベイクルーズ(東京都渋谷区)が運営するロブスターロールの専門店“LUKE’S” (記事はこちら)を紹介しています。
ファッションブランドの持つ世界観を「衣」だけでなく「住」や「食」の領域も含めトータルに伝えていきたいという考えに基づくこうした動きは、すでに一つの流れとして定着しています。

退店ランキング(図表2)に視点を移すと、退店ランキングの1位は “デジキュー”と“SUBWAY”(いずれも差引退店数4店)の2ブランドとなりました。

“デジキュー”は、株式会社デジサーフ(神奈川県藤沢市)が「バーベキューをもっと身近に簡単に」をコンセプトに、商業施設の屋上や建物の外部にバーベキュー場を設置しているものです。
バーベキューで面倒な炭の準備やグリル等の片付けが不要なことを特徴としているほか、食材も用意してもらえる完全手ぶらバーベキューだけでなく、ショッピングセンター内のスーパーや食品フロアなどで購入したバーベキュー食材、ドリンク類、お惣菜やデザートまで持ち込めるようにしたサービスも提供しています。
今回の退店ランキング入りについては、屋上や建物外という特性上、期間を限定したサービス提供となるため、それに伴う退店ランキング入りとなっている可能性があります。

“SUBWAY”は過去にも指摘(記事はこちら)しているとおり、このランキングが始まって以来、連続して退店ランキングの1位となっています。
日本サブウェイ合同会社(東京都品川区)が運営する“SUBWAY”は、もともとアメリカで展開が始まり、本稿執筆時点に公開されているデータでは4万2千店を超える世界規模のチェーンとなっています。わが国では米サブウェイからマスターフランチャイズ権を取得したサントリーホールディングスが設立した、日本サブウェイが展開をスタートさせています。その後、16年にフランチャイズ権が切れたことから、18年にサントリーホールディングスはサブウエィ事業から撤退しました。それに加え、19年1月には首都圏を中心にフランチャイズ店を展開していた株式会社エージー・コーポレーション(東京都品川区)が破産したことなどもあり、路面店も含め店舗数の減少が続いています。

集計対象ショッピングセンター

  • 2018年12月末日までにSC GATEに登録されている
  • SC面積が1,500㎡以上である
  • 2017年1月~2018年12月末日の最大テナント数が10テナント未満ではない
  • SCタイプが「駅ナカ」「駅ビル」「地下街」「駅周辺・市街地」「郊外」「超大型施設」「アウトレット」「空港」に分類されている

【本稿はSC GATEの2018年12月末時点データを用いて作成しています】

SC GATEとSC GATEのデータについてはこちらをご覧ください

関連レポート

  • 前四半期のこの業種(飲食)のランキングはこちら