SCトレンド研究所

防犯カメラ販売会社が手がけるコッペパン? - 【食品大業種四半期SC出退店ランキング】

防犯カメラ販売会社が手がけるコッペパン? - 【食品大業種四半期SC出退店ランキング】

2019年4月~6月期の食品大業種のSC(ショッピングセンター)出店ランキングを報告します。

この出退店ランキングは、この期間中にショッピングセンターに出店、もしくはショッピングセンターから退店したブランドについて、出店数と退店数から差引出店数と差引退店数を算出し、その上位から20位までのブランドを表示したものです。ランキング方法や詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

食品大業種のSC出退店ランキング - 【2019年4月~6月期】

異業種続々と参入!地域密着型スーパーのオリジナルブランドにも注目

2019年4月~6月期の食品大業種のSC出店ランキングは図表1のとおりとなりました。

出店ランキングの1位は差引出店数7店で、株式会社キャメル珈琲(東京都)が運営する“KALDI COFFEE FARM”となりました。
S-PAL仙台、The CUBE京都駅ビルや沖縄のサンエー浦添西海岸PARCO CITYに出店しました。

同社は1977年9月の設立当初、喫茶店向けコーヒー豆の卸売を中心に営業していましたが、1986年に小売店舗として「カルディコーヒーファーム」第1号店(現下高井戸店)を開店。以来、輸入食品を主に取り扱うショップとして全国で店舗展開しています。

以前は路面や大型SCの食品売り場での展開が殆どでしたが、イタリア食材、アジアのスパイスなど、ホムパやお洒落な家庭料理に不可欠なものが手頃な値段で揃うとあって人気を集めてきました。天井まである棚に所狭しと並べられた「圧着陳列」は、ややもすると雑多感があり、庶民的な親しみやすさを演出していましたが、2017年春の二子玉川ライズSCの5Fファッション、雑貨フロアへの出店、2018年春の東京ミッドタウン日比谷への出店など、オシャレで経済的に余裕がある主婦層をターゲットにしてステイタス感が上がった感があります。ルミネ横浜店など若い女性たちが集まるエリアへの出店で、ファッション的イメージもプラスされています。

注目したいのが差引出店数3店で4位の“Gooday for you Roppongi”(株式会社グッディ・フォーユー六本木)。
ホームメイドのスコーンとチーズケーキの店で、国産の卵・生クリーム・牛乳で作るさまざまな種類のスコーンや、厳選されたレモンを使ったチーズケーキが素朴で美味しいと、健康意識の高いオシャレ女子に受けています。
ショップHPによると、卵は秋田・青森産、生クリームは北海道産、牛乳は北海道・岐阜産のものを使用と産地にもこだわりがあります。
催事出店を積極的に展開しています。

“コッペ亭”(保安企画 福井)は福井県発のコッペパン専門店です。
コロッケやソースカツをはさんだ「総菜系」や、クリームやあんバターなどを使った「おやつ系」で40種類以上を販売しています。人気の秘密は続々誕生する総菜パンの新メニューだと思われます。カリッと揚げた出汁入りタマギカツや新生姜入りお好み焼き風タマゴカツ、とはどんな食感なのでしょうか、意表を突く新鮮さがあります。
防犯カメラ、監視カメラの販売・設置を行う異業種が畑違いの新規事業に挑んだ理由は、雇用を守るためだったそうです。「クルマの自動運転の実現が近づくことで、本業に危機感を覚えた」という社長が、新規事業の開拓を進める中でコッペパンのおいしさに将来性を見出し事業化を決定。平成29年11月、福井市内に1号店を開店しました。2020年中に同市の本社横にコッペパン工場を新設、都内に出店を予定しています。(2019/6/26 日本経済新聞 電子版

当四半期の特徴としては、上位20位のうち洋菓子・和菓子が10ショップブランドを占めています。こだわりの食材を使った丁寧なモノづくりの、ステラおばさん、東京風月堂などの有名店も入っています。

特筆すべきは異業種による食品への参入です。

“コッペ亭” もそうですが、差し引き出店数2店で6位の“寺おお焼”の運営会社はサンダイコー株式会社(京都)という、スーパーを展開する会社です。“寺おお焼”というショップ名は社長の寺尾さんから取られたようです。豊かな自然が自慢の丹波町を拠点としたスーパーとして、地元の農産物を積極的に販売し、地産地消を目指した企業です。
同じく差し引き出店数2店で6位の“food way”も福岡発のスーパーです。

地方のこだわりスーパー発のオリジナルブランドには今後も注目です。

図表1 食品_大業種の出店ランキング(差引出店数上位20ブランド)

退店ランキング(図表2)に視点を移すと、1位は差引退店数4店で、“金花”となりました。
企業HPによると、“金花”は2019年8月28日の営業を持って廃業すると掲載されています。1917年創業の100年企業で、米菓(あられ・煎餅)50種類以上・飴70種類以上・和菓子(大福等)30種類以上、豆・ドライフルーツ・珍味等400種類を越える季節を取り入れた、きんか独特の商品を取り揃えていました。

2位は差引退店数3店で“ワッフル・ケーキの店 R.L”。
運営は建築設計事務所という異色のワッフル屋で、黒と赤を使った独特の店舗デザインと月替わり20種類の「ワッフルケーキ」が売りです。

3位は差引退店数2店で“Yesterday’s tomorrow”でした。
2年前、カルビーの新業態ショップとしてオープンした“Yesterday’s tomorrow”は日本一のお菓子が大集結した駄菓子屋で、量り売りコーナーやお菓子出来立てコーナーなどもあり、ブランドの垣根を越えて、知名度の高いお菓子や日本各地にある魅力的なお菓子の魅力を発信しようと開発されました。
店内では、ロングセラー商品をはじめとして、地元だけで売られていたお菓子、出来たてのお菓子などを展開していました。

図表2 食品_大業種の退店ランキング(差引退店数上位20ブランド)

集計対象ショッピングセンター

  • 2019年6月末日までにSC GATEに登録されている
  • SC面積が1,500㎡以上である
  • 2017年7月~2019年6月末日の最大テナント数が10テナント未満ではない
  • SCタイプが「駅ナカ」「駅ビル」「地下街」「駅周辺・市街地」「郊外」「超大型施設」「アウトレット」「空港」に分類されている

【本稿はSC GATEの2019年7月末時点データを用いて作成しています】

SC GATEとSC GATEのデータについてはこちらをご覧ください

関連レポート
  • 前四半期のこの業種(食品)のランキングはこちら