SCトレンド研究所

常連組2社とドローン1社が安定飛行。地域貢献で地元不動産業や自治体が遊戯施設を出店 - 【アミューズメント大業種四半期SC出退店ランキング】

常連組2社とドローン1社が安定飛行。地域貢献で地元不動産業や自治体が遊戯施設を出店

2019年4月~6月期のアミューズメント大業種のSC(ショッピングセンター)出店ランキングを報告します。

この出退店ランキングは、この期間中にショッピングセンターに出店、もしくはショッピングセンターから退店したブランドについて、出店数と退店数から差引出店数と差引退店数を算出し、その上位から20位までのブランドを表示したものです。ランキング方法や詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

この記事が当四半期のランキング記事の最後となります。

アミューズメント大業種のSC出退店ランキング - 【2019年4月~6月期】

退店しながら実験店で業態模索する動き。神戸、浅草の劇場閉店の中に引き継がれるDNAを発見

出店ランキングの1位には、差引出店数2店の3ブランドが入りました。
“SEGA”と“Kid’s US.LAND”、“DRONE THE WORLD”です。

“DRONE THE WORLD”は、前回“SKY FIGHT”で1位にランキングされたゲームがショップ名に戻ったもので、今後も出店は高水準で続きそうです。

“Kid’s US.LAND”は“SEGA”などとともに、よく登場するブランドです。運営するのはユーエスマート(三重県伊勢市、井上直樹社長)で、1948年創業時は田口砂糖店でした。その後100円コンビニを経て2000年7月に“Kid’s US.LAND”1号店を開設し、13年2月に現社名へ変更しました。

現在の店舗数は145で、大手の一角を占めています。スクラップ・アンド・ビルドを進めているため、出退店ランキングに登場する機会が多いのでしょう。19年5月には屋内サバイバルゲーム4店を運営するエッジコンピューティングイノベーションの全株式を取得して、ウィングを広げています。

4位以下はみな1店ですが、子ども向けの“こどもひろば どれみ”と“こべっこあそびひろば”が共にひらがなだけの名前で、目を引きました。

“こどもひろば どれみ”は福岡県にある博多不動産グループが設置した2つ目の遊戯施設で、同社はきらら保育園も運営しています。
地元企業の社会貢献という面が強いのでしようか。

一方、神戸市北区のエコール・リラに開業した“こべっこあそびひろば”。
運営するのは、みのり福祉会で、市の委託事業なのでしょう。利用料は無料です。
「子連れで遊べる室内施設がほしい」「乳幼児の遊び場が少ない」という市民のニーズに応えて開設されたといいます。市は今後、各区庁舎などにも同様の施設を新設する方針だといい、子育て環境の充実をめざす自治体の方針が反映されています。

図表1 アミューズメント_大業種の出店ランキング(差引出店数上位20ブランド)

今回の退店ランキングでは、1位に“kidzooona”と“HALOS GARDEN”が2店で並びました(図表2)。

出店の部で4位に入っている“kidzooona+”は“kidzooona”の実験店で、横浜に出店しました。
運営するイオンファンタジーには“Skids Garden”という子どもだけしか入場できない業態がありますが、“kidzooona”は親子一緒に『絆』づくりを楽しむ施設。これを“kidzooona+”では、どちらでも構わないようにしました。
“kidzooona”は今回の退店などで国内は5店だけに。もともと海外主体の業態なので今後、国内をどうするのか気になるところです

“HALOS GARDEN”は2店ですが、運営するハローズの“kid is…”を入れると今回3店退店したことになります。

今回の退店ランキングでは、ふだんあまり見かけない「劇場」が2店入りました。
“浅草六区ゆめまち劇場”と“新神戸オリエンタル劇場”ですが、両店には、ルーツにダイエー創業者の故中内功さんがかかわっていたという共通項がありました。

ダイエーが絶頂期だった1988年。生まれ故郷・神戸の玄関口である新神戸駅前にふさわしい複合商業施設を、とホテルと専門店、劇場を一体でオープンしたのが新神戸オリエンタルシティでした。
専門店街部分はオリエンタル・パーク・アベニュー(当時)で、カタカナの頭文字を並べるとOPA。そう、今のオーパのルーツです。

同時期に、中内さんは都内で経済人を介して「浅草おかみさん会」の後見人的存在になっていました。そこで現在も理事を務める冨永照子さんに頼まれたのが「ジャズの発信基地が欲しい」。

今でこそ有名な浅草のジャズフェスティバルですが、当時は萌芽期。中内さんは子会社を使ってジャズ演奏をする英国風パブ「HUB」をオープンさせたのです。

中内さん亡き後もジャズフェスティバルは続き、14年オープンの“浅草六区ゆめまち劇場”も会場に使用されたり、クローズイベントには冨永さんも登壇するなど「おかみさん会」はフル活用しました。

現在、神戸の劇場はミュージカル専用劇場に生まれ変わり、浅草は、5年間限定の賃借だったため劇場こそなくなりましたが、ジャズフェスティバルやHUBは活動を続けています。

時代の流れで変化するSCと、それを支えるテナント(店)。
たとえ経営主体が変わったりしても、創業時のDNAはどこかに生き続けているのです。

図表2 アミューズメント_大業種の退店ランキング(差引退店数上位20ブランド)

集計対象ショッピングセンター

  • 2019年6月末日までにSC GATEに登録されている
  • SC面積が1,500㎡以上である
  • 2017年7月~2019年6月末日の最大テナント数が10テナント未満ではない
  • SCタイプが「駅ナカ」「駅ビル」「地下街」「駅周辺・市街地」「郊外」「超大型施設」「アウトレット」「空港」に分類されている

【本稿はSC GATEの2019年7月末時点データを用いて作成しています】

SC GATEとSC GATEのデータについてはこちらをご覧ください

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  • 前四半期のこの業種(アミューズメント)のランキングはこちら