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ドローンがエンタメ侵攻、ゴルフシミュレーションが郊外へ…など大変化 – 【アミューズメント大業種の四半期SC出退店ランキング】

ドローンがエンタメ侵攻、ゴルフシミュレーションが郊外へ…など大変化 - 【アミューズメント大業種の四半期SC出退店ランキング】

2019年1月~3月期のアミューズメント大業種のSC出店ランキングを報告します。

この出退店ランキングは、この期間中にショッピングセンターに出店、もしくはショッピングセンターから退店したブランドについて、出店数と退店数から差引出店数を算出し、上位から20位までのブランドを表示したものです。ランキング方法や詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

この記事が当四半期のランキング記事の最後となります。

アミューズメント大業種のSC出退店ランキング - 【2019年1月~3月期】

退店目立つ子ども向け施設も実は堅調
ただし今後の課題は新業態開発

2019年1月~3月期のアミューズメント大業種のSC出店ランキングは図表1のとおりとなりました。

出店ランキングの1位には、差引出店数2店の2ブランドが入りました。具体的には“SKY FIGHT”と“タイトーFステーション”です。

“SKY FIGHT”は今回のランキングで初登場のブランドです。参加型ドローンレースで、5,000人がオンライン対戦できる仕組み。
会員登録してからスマホにアプリをインストールすると、自分のランキングなどが見られます。対戦好き、ランキング上昇志向の人には堪えられないことでしょう。
今年の2月に公式サイトを立ち上げたのですが、人気に応えるため都心、郊外を問わずショッピングセンター中心に「2~3月中に10箇所オープン」(同社HP)。対戦イベントも連発中です。

運営しているのはドローンネット(東京、村上一幸社長)で17年3月に設立されたベンチャー企業。別業態が18年7月~9月期にランキング入りしています(記事はこちら)。
ビジネスからエンタメに転じ、今はやらせているコンテンツの一つが“SKY FIGHT”。まさに業界は「飛ぶ鳥を落とす」ならぬ「飛ぶドローンに落とされる」勢い。積極出店を続けており、これからしばらくはランキング上位に出続けるでしょう。

“タイトーFステーション”は、タイトーステーションのF(フランチャイズ)パッケージ加盟店です。
2店ですが、フランチャイジーはそれぞれ別。最近の出店を見てみると郊外の既存ショッピングセンターへの出店が目立ちます。出店場所が以前どうなっていたかまでは明らかではありませんが、大型テナントの退店に伴っての出店というケースがあるのかも知れません。

3位以下はみな1店ですが、先頭にある“18 GOLF PRACTICERANGE”。
ゴルフとあるので都心なのかと思ったら、何と石川県のイオンタウン野々市(核店舗はマックスバリュ)に「北陸初の練習用シミュレーター『GDR』採用」というふれこみでオープンしていました。
高性能もさることながら、驚くのは料金で、50分打ち放題2,300円。都内にあるスクールやゴルフバーと比べると半額強でしょうか。6月末にはラウンド型シミュレーションも導入しましたし「連れがスーパーで買い物している間に、ハーフをプレイ」なんてこともあるでしょう。
同種の施設が出てくることは、大いに予想されます。

図表1 アミューズメント_大業種の出店ランキング(差引出店数上位20ブランド)

今回の退店ランキングでは、4位までに子供向け遊戯施設が並びました(図表3)。
“Molly Fantasy”はイオンファンタジー、“あそびぱーく”はバンダイナムコ、“遊キッズ愛ランド”はビーエルデーオリエンタル、“NICOPA”はカーゾックがそれぞれ運営し、3位までは店舗数が3ケタの大手企業です。子供向け遊戯施設は相対的に厳しいように見えますが、単純に、そうは言えない側面もあります。

イオンファンタジーは15年に、傘下に入ったダイエー子会社のファンフィールドと合併しましたが、旧ダイエーは不採算店舗が多く毎年、一定数ずつ閉鎖を進めています。19年2月期は他業態を含めれば11店出店する一方、22店を閉鎖しました。
バンダイナムコは19年3月期で同様に26店出店、23店退店をしています。“遊キッズ愛ランド”を含め、GMS(総合小売業)そのものの撤退の影響を受けているところもあります。

子供向け遊戯施設が不振と言えないもう一つの理由は、ゲームセンターなどと同じでクレーンゲームの好調に支えられ、総じて活況だということです。00年代のブームに慣れ親しんだ世代が親になり、今度は子どもを連れて遊ぶようになったこと、景品が多様化して幅も広がり、機械も大型化したことなどが背景にあると言われています。

アミューズメントの市場規模はピークが06年の7,000億円で、その後、家庭用ゲーム機に取られたり、リーマンショックなどもあり減少を続けていましたが、15年の4,338億円を機に上昇に転じ、18年には4,770億円になったと推測されています(矢野経済研究所調べ)。出店ランキングで出てきたような新業態が成長エンジンになっているのでしょうが、クレーンゲームに支えられて既存業態も堅調だということです。

そうは言っても少子化・人口減少は避けて通れない問題。対策は①海外出店②新業態開発――でしょう。
海外出店は退店ランキング3位までの企業は既に実施しています。特にイオンファンタジーは20年2月期、スクラップを勘案しなければ海外店舗数が初めて国内を上回る503になる計画で、海外シフトが明確です。

新業態開発は、ベンチャー企業に限らず、既存企業も取り組みを進めています。
トレンドは①デジタル②知育・教育③フィジカル――か。
子どもの数が少なくなっても、引き出しの違う業態をたくさんつくって、売り上げを増やすのです。いずれにしても、今後の出店ランキングの顔ぶれがどう変わるか、どんな業態が生まれるのか――興味が尽きません。

図表2 アミューズメント_大業種の退店ランキング(差引退店数上位20ブランド)

集計対象ショッピングセンター

  • 2019年3月末日までにSC GATEに登録されている
  • 2019年3月末日時点で営業している
  • SC面積が1,500㎡以上である
  • 2017年4月~2019年3月末日の最大テナント数が10テナント未満ではない
  • SCタイプが「駅ナカ」「駅ビル」「地下街」「駅周辺・市街地」「郊外」「超大型施設」「アウトレット」「空港」に分類されている

【本稿はSC GATEの2019年4月末時点データを用いて作成しています】

SC GATEとSC GATEのデータについてはこちらをご覧ください

関連レポート

  • 前四半期のこの業種(アミューズメント)のランキングはこちら