4月4日、銀座3丁目に良品計画の世界旗艦店「無印良品銀座」とレストラン「MUJI Diner」、「MUJI HOTEL GINZA」がオープンしました。
17年間営業した有楽町店(3,300平方㍍、18年12月閉店)に代わり、無印では最大の3,981平方㍍にMUJI Diner 317平方㍍、ホテルは79室を備えています。
無印の世界観で「銀座や世界の人と町をつなげる」ため、年間300回のイベントを計画するなど、モノとコトの融合を志向。
「三位一体で多くの海外客を呼び込む」(松崎暁社長)ことができるのでしょうか。
銀座店は、店舗面積が有楽町店の120%。
聖地・有楽町店の生まれ変わりを強く意識しているだけに、店舗・商品説明など何事を語るにも有楽町と対比されます。
数値目標では年間客数が120%の230万人、MUJI passportフォロワーが400%の20万人。
商品構成も同様です。
売り場計画では衣服・雑貨が112%、生活雑貨が105%、食品が134%。
120%が標準ですから、新カテゴリーを中心に食品を拡大し、逆に衣服・雑貨と生活雑貨を絞り込んでいることが分かります。
この事業は、建物所有者・読売新聞東京本社と三井不動産のプロジェクトに、良品計画と、設計・ホテル運営などを手がけるUDSが共同で参画し実現しました。
一棟借りですから家賃は相場より安いでしょうが、名だたる一等地だけに採算はどうなのか。
外資などには「銀座出店は宣伝費のようなもの」という企業もありますが、松崎社長は「投資回収は通常店舗と同じで、全世界どこでも出て行く」ときっぱり。特別視する考えは一切ないといいます。「ここは有楽町より人通りが多いので、売り上げも取れるでしょう」と斉藤正一店長も自信満々でした。
一方、ホテルは「少しも無駄のないよう、コンパクトにつくっている」(梶原文生UDS会長)ことで高効率を追求しました。3月から予約を受け付けていますが、しばらくは満杯状態で、銀座に先駆けて昨年開業した北京も90%稼働しているといいます。
目次
B1はMUJI Diner。
レンガと古材で食品倉庫をイメージさせ、オープンキッチン、豆腐工房はライブ感を演出。肉や魚、野菜など食材が見え、おいしそうな「シズル感」を出すのに工夫を凝らしました。
1階はトタンで市場・小屋をイメージした内装を用い、食品・ベーカリー・ブレンドティー工房で構成。
青果売り場は旬の食材をボリューム展開し、初の日替わり弁当(750円)も始めました。5個以上の注文なら配達もします(中央、港、千代田の3区限定)。
2階・3階は衣服・雑貨。
圧倒的なボリューム陳列を心がけ、基本の色は1サイズ1フェイス展開で買いやすさにも配慮しています。服種で選びやすく、生活雑貨はシーンと単品訴求でイメージできる。商品の「わけ」と価格がお客視点の販促ツールで伝わる売り場づくりに務めました。
扱い商品は基本的に他店と同じですが、中には銀座限定の商品も。
阿波しじら織りの甚平は、得意のオーガニックコットンを使用し、価格は通常品の3倍の1万4900円。
ほかに無着色のためスケルトンになっているキャリーケース、スニーカーなどがあります。
役に立つため、食品では野菜・果物の「わけ」や文化を伝えるよう、試食は素材の良さを引き出し、なるべくシンプルな形で提供することが必要です。
50種類の原料から32種類のレシピを提供する「ブレンドティー工房」。
訪れた日は「甘夏のさわやかな香りと、まろやかな緑茶」をテースティングさせていました。
ははぁ――
たしかに緑茶なのですが、軽い酸っぱさが舌から鼻を抜けて脳に届くような感じ。アドバイザーが話してくれたように、気分転換にはもってこいでした。
暮らしに役立つでは、収納やインテリアコーディネート、ねむりの相談、訪問しての軽作業手伝いなど、以前からやっていたサポートサービスを充実させました。
中でも”深化”させたのが出張ワードローブ相談サービスです。従来も店頭でコーディネートや似合う色、サイズなどの相談はしていましたが、銀座では希望するお客の自宅まで出向くことにしました。
何でそこまでするのか――。
「相談してくる人が年々増えているんです」と担当者。
無印が無駄なものを持たないライフスタイルを推奨していることから「捨てる、捨てられない」で困惑している…主に女性の相談が多いとか。
なじみ客には、家まで行って”断捨離”の背中を押すといったところでしょうか。
社内公募で実験したところ、20着ほど手放した人がいたそうです。
年300回のイベントには、地元商店会と連携した催事なども含まれます。
じっくり座って文化を考えるなら、6階の「ATELIER MUJI」に行きましょう。
イベントを行うラウンジと、デザイン関連の書籍が閲覧できるライブラリー。
つながりを深めるには、グラスを片手に語り合うのもいいでしょう。
サロンでは午前10時から深夜2時まで酒を含む飲み物、デザートを提供。
ホテルのフロントそばにありますから、宿泊客には特に便利です。
同じフロアにはレストラン「WA」もあります。
日本各地にあるふるさとの味を、実際に現地へ足を運んで発掘。
3カ月に1回、地域を変えて日本の食風土を紹介する最初は大分県です。昼食に用意されたお膳は県民食の「とり天」で、とり肉に天ぷら粉をつけて揚げたものです。弁当屋や定食屋はもちろん、中華料理屋や喫茶店にもあるとのこと。
”誰もが愛してやまない”とまで言われたら、県民でなくても試したくはなりますね。
旅先でもふだんの生活の延長の感覚で心地よく過ごせる空間と、宿泊客と土地をつなげるサービスを提供するのがMUJI HOTEL。
5つ星でもなく、値段が安いのでもなく「ちょうどいい」。
マンションや住宅と同じように良品計画がコンセプト提供・監修し、UDSが企画から経営までを手がけます。
当初オフィスビルにする計画だったのを変更し、なおかつ高効率を求めたため、細長い部屋はまるでウナギの寝床のよう。
それでも、長い通路を歩いて行き着いた窓の外には銀座三丁目の風景が。
誰でも、気分だけは一瞬ゴージャスになるでしょう。
部屋は15平方㍍から27平方㍍までの8タイプ(1万4900~2万9900円)と、角部屋でヒバの木のバスタブを供えているスイートルーム1室(52平方㍍、5万5900円)。
それぞれ個性があるのですが、ホテル担当者の一押しは一番コンパクトなAタイプでした。
だいたい、安いのに狭さを感じさせないのですから。
秘けつは天上高を高くし、バスルーム入り口の扉を収納スペースに活用して広さをめいっぱい演出したこと。
2人で宿泊すると、追加料金5000円を足して合計1万9900円なのですが「銀座で1人1万円を切るのは、お得感がある」。
納得です。
また、部屋の備品は無印良品が多く「一晩試してから、店で買って帰ることもできる」メリットが。
しかし訪日旅行客のマナーが問題になっている折、「みんな持っていかれちゃうんじゃないか?」と、心配している関係者もいました。