The Institute of SC Trend

「物からコトへ」がトレンドだけど‥ “究極の非物販SC”が横浜に

巨大なオブジェですが、この色調だとまるで惑星のようで、すがすがしさが漂います。チョコレート系は想像しない方がよろしいかと‥
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アソビルの外観。派手なロゴこそありますが郵便局の裏手にあることもあって商業施設には見えません

アソビルの外観。派手なロゴこそありますが郵便局の裏手にあることもあって商業施設には見えません

「物からコトへ」――
物販を縮小して非物販、とりわけサービス部門を充実させているSC業界ですが、3月15日横浜駅東口に、飲食以外にはほとんど物販がないSCがオープンしました。

「リアルな体験」コンテンツで構成したエンターテインメント型商業施設「アソビル」(地下1階~地上4階、フロア面積1万2000平方㍍)です。

「リアルな体験」でネットと差別化
空床に悩むデベは興味津々

施設はまだ全部完成していませんが『誠意と情熱は100%』と強調する香田CEO(左)と『好奇心だけで生きている』小林CPOのお2人

施設はまだ全部完成していませんが『誠意と情熱は100%』と強調する香田CEO(左)と『好奇心だけで生きている』小林CPOのお2人

運営するのはモバイルゲーム事業アカツキの100%子会社アカツキライブエンターテインメント(ALE、代表取締役CEO=香田哲朗アカツキ共同創業者)。
SCの現状を「リアルなものがないと、みんなネットに取られちゃう」(香田CEO)と認識し、外部出店を積極的に進めるとしていることから、オープン時にはディベロッパーなど業界関係者も多く訪れました。

コンセプトは革新的なのですが、まず外観を見ると復古調?壁にペインティングこそされていますが、どう見ても古びたビルそのもの。
それもそのはず、アソビルは郵便局別館として長年使用されていた建物に居抜き出店したのですから。
外装に手を入れない理由は、周辺に都市再開発計画があるため、何年か後には退店せざるを得ないから。ALEは、日本郵便と定期借家契約を結びました。

アソビルフロア構成

アソビルWebサイトの情報をもとにSCトレンド研究所作成

全館エンターテインメントの「アソビル」
物販は「うんこグッズ」くらい!?

アソビルは「他の商業施設やアミューズメントにはなく、ここでしか出来ない体験」のコンテンツを集めています。

巨大なオブジェですが、この色調だとまるで惑星のようで、すがすがしさが漂います。チョコレート系は想像しない方がよろしいかと‥

巨大なオブジェですが、この色調だとまるで惑星のようで、すがすがしさが漂います。チョコレート系は想像しない方がよろしいかと‥

中でも売りが、2階「ALE-BOX」に出店した、国内初の「うんこミュージアム YOKOHAMA」。

11年から同種のサービスを提供している”面白法人”カヤックの思いがALEに通じ、両社が共同企画したものです。「見るだけではなく触って(もちろん本物ではありませんが‥)、叫んで、戯れて、撮影も出来る”ウンターテインメント”」ですから、入場したらウンの尽きか。
羞恥心を捨てなければとうてい体験などできません。

入場したら、まずコールです。案内役の女性に指示されて、大声で「うんこー!」と叫ぶまでは、許してもらえません。
何とかパスして次の間に行くと便器が並んでいて案の定、そのまま座らされます。「頑張ってえぇ」と励まされ、そのうちポトリと何かが落ちてきて。
それはプラスチック製の「マイウンコ」でした。拾って、串に刺して、それを持って各種展示を見て回ります。

中では学習もします。回り終わるころには、さぞウンチクがついているでしょう

中では学習もします。回り終わるころには、さぞウンチクがついているでしょう

最後に記念品グッズをお買い求めできます。SC内で唯一に近い物販がうんこグッズ。ちなみに小さいマイウンコはお持ち帰りできます

最後に記念品グッズをお買い求めできます。SC内で唯一に近い物販がうんこグッズ。ちなみに小さいマイウンコはお持ち帰りできます

アソビルは「遊べる駅近ビル」の意からネーミングされましたが、企画を発表してから「一部で『うんこビル』と言われている」と、香田CEOは満更でもない様子。これでは、本家のアサヒビール本社(浅草)もうかうかしていられないかも知れません。

日本最大級のワークショップも

ワークショップは日本最大級の広さです。オープン前からすでに営業中

ワークショップは日本最大級の広さです。オープン前からすでに営業中

エンタメではありませんが、違う客層を集めそうなのが、国内最大級のハンドメイド体験フロア「MONOTORY」です。3階フロアには定番のものづくりや最先端技術を使ったワークショップが毎日開催されるアトリエやイベントスペース、セレクトショップを集結させました。

「趣味が多いほど人生は楽しくなる」(小林肇CPO)。ご本人は「好奇心だけで生きている」というだけあって、マーケティングも万全です。
「大量生産より、ハンドメイドされた一点物の需要が高まっている」中で、市場には「地域のカルチャースクールは魅力が感じられない」「マンションの一室で行われている教室は敷居が高い」声があると。
趣味を仕事にしている人が、今度は仕事で趣味を具現化したとも言えそうです。

飲食フロアで地域貢献を

地域貢献という別の顔を持っているのが、地下1階と地上1階の飲食フロアです。
地下1階の担当者は、横浜駅西口をリサーチして居酒屋チェーン以外に寄れる店が少ないことに着目。アートとテクノロジーをアミューズメントコンテンツに生かし、はしご酒で「2軒目として、おしゃれに利用できる場所」をつくり上げました。
これは主として地元オフィスワーカーへの貢献です。

地元業者に貢献しようと試みたのが、地上1階のグルメストリートです。
「横浜が好きな人による、横浜を好きになってもらうための場所」をテーマにテナント開発を進めました。

1階入り口を入るとシウマイバルが先頭に

1階入り口を入るとシウマイバルが先頭に

真っ先に声掛けしたのが、アソビルの近くに本社がある崎陽軒。同社はシウマイと酒を気軽に楽しめる「シウマイBAR(バル)」の3号店を出店することにしました。

16年に東京駅一番街へ1号店を開業し、人気は今も継続しています。2月末にルーツの中華街に2号店を開いたばかりで、今回は横浜2号店という意味も。野並晃専務は「横浜の食のシーンに新しい価値を提供する」。お勧めメニューは昔ながらのシウマイ、焼きシウマイ、5種盛り合わせなど。「うちの商品は若年層・ミドルに弱いので、ここでどう認知されるか勝負したい」と決意しています。

ダイゴミバーガーで追いチーズを頼むと、スタッフがたっぷり豪快にかけてくれます

ダイゴミバーガーで追いチーズを頼むと、スタッフがたっぷり豪快にかけてくれます

地元以外からの注目店舗は、何と言ってもALE直営で南青山・池袋に店舗を持つチーズバーガーの新業態「DAIGOMI BURGER(ダイゴミバーガー)」でしょう。
「チーズ好きな人の、チーズ好きな人のため」をうたっていますが、とりわけ別料金の「追いチーズ」は、見ているだけでど迫力。もっとも、本当のチーズ好きでなければ手、ではなく口を出せないかも知れませんが‥。

他にも立ち食い鮨の「鈴な凜」や、”せんべろセット”の「呑りすけ」など、最低1度でも入りたくなる店が揃っています。

寿司を立ち食いで、という鈴な凜。高回転が期待できるためリーズナブル価格ですが、食材は回転寿司より上質です。ランチはともかくディナータイムにどれだけ酒類が出るのか気になりますね

寿司を立ち食いで、という鈴な凜。高回転が期待できるためリーズナブル価格ですが、食材は回転寿司より上質です。ランチはともかくディナータイムにどれだけ酒類が出るのか気になりますね

呑りすけセットは3704円で、いくらは種類が全部別というこだわりようです。1000円で4杯、ガチャが当たれば最大7杯飲めるから”せんべろ”なのですが、酔いに任せてつまみを頼みすぎると想定外のことにも‥

呑りすけセットは3704円で、いくらは種類が全部別というこだわりようです。1000円で4杯、ガチャが当たれば最大7杯飲めるから”せんべろ”なのですが、酔いに任せてつまみを頼みすぎると想定外のことにも‥

3年で閉め、5年で全国へ
パーツでも全館でも積極出店

気になる商圏と、売上高ですが――。
各種コンテンツはウェブ上で予約を取っているので、そこから推計しています。それによると7割が横浜、1割が東京。残りは関東とその他。年齢は30代中心に前後10歳と続き、6割が女性だそうです。
もちろん飲食はこれとは別。昼と夜では全く異なることが予想されます。

滞在時間は「半日程度」が大勢か。
エンタメ終了後に、どれだけ飲食も楽しんでもらえるかがカギを握っているようです。

さて売り上げですが、残念ながらALEの思いは「ここでしか出来ないリアルな体験」の創出であって、成功は「売上高●●億円ではない」とまで言い切っています。仕方なく、客単価の予想を聞くと「平均5000~6000円か」(香田CEO)。初年度で200万人の来場を目指すとしていますから、それで計算すると目安は100億~120億円でしょうか。

また、定借契約なので営業期間も重要なポイントです。最低3年間で、それでも投資回収できる見通しを、香田CEOは明らかにしました。

ですからALEの最重点は、フロアごとに異なる各コンテンツを横浜で成熟させ、フロア単位でも全館でも横展開できることを証明し、打って出る。
5年間で主要都市を中心に展開し、海外にも意欲的に出店する計画です。
「今後、駅前の退店が増えていくのではないか」と予想する香田CEOの表情からは、全国のSCから誘致される読みと決意がうかがえました。

かつてSCの空床に貢献したダイソーや現在のドンキホーテ。
横浜が成功すれば、将来そこにアソビルも名を連ねる可能性は、十分にあるでしょう。

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