SC・ショップの未来を“データ”で照らす

“人生100年時代”に向かう「次世代型SC」に求められるものは何か

 

「人生100年時代」がやってくるといわれている。この「人生100年時代」は、人材論の世界的な権威、リンダ・グラットン英ロンドンビジネススクール教授が、近著「ライフ・シフト 100年時代の人生戦略」(アンドリュー・スコット共著、池村千秋翻訳、2016年、東洋経済新報社)で提唱したものだ。我が国の平均寿命について、本書は、2007年に生まれた人の半数は、この人生100年時代を現実に生きることになると、予測している。

今回の業種トレンドレポートは、この07年前後に生まれた「キッズ」をテーマにお届けしたい。

いわゆる少子化が進む中、なぜキッズをテーマにするかというと、理由はこれだ。確かに17年4月1日現在における我が国の15歳未満の人口は1571万人で、前年に比べ17万人の減少(約1.1%減)、しかも昭和57年から36年連続の減少となっている(総務省統計局、出典)。しかし、ソニー生命保険株式会社(東京都千代田区)が17年3月に発表した「子どもの教育資金に関する調査2017」は、学校以外での教育費の平均支出金額(子ども一人あたり・月額)が1万2560円で、昨年より2320円増加したと報告している。なんと約22.6%の大幅増だ。

こうした状況から、このトレンドレポートでは、SCに出店している物販や飲食以外の業種で、キッズに関連している小業種の中から、出店数などを考慮して4つの小業種、「英会話・英語教室_小業種」、「学習塾・予備校_小業種」「音楽教室_小業種」(いずれもサービス_大業種、カルチャー教室・学校_中業種)、「室内遊園地_小業種」(アミューズメント_大業種、子供向け遊戯施設_中業種)を選択した。(以下、小業種名については“_小業種”を付さずに表記)

英会話・英語教室や音楽教室などは、テーマであるキッズから少し離れるのでは?という指摘があるかもしれないが、これらの小業種に属するブランドについて、公開されているウェブサイトなどから大部分のブランドで未就学児や小学校児童向けのサービスが提供されていることを確認している。

また、保育所・託児所は、出店の背景となる利用ニーズが、子ども側ではなく大人側にあり、少し特性が異なるため対象小業種には含めていない。

 

【キッズ関連4小業種のSC出店状況とSC出退店D.I.】

キッズ関連小業種は高い出店傾向、多店舗出店が伺える英会話・英語教室

図表1はこれら4つの小業種のSCへの出店状況を集計したものだ。

ブランド数は学習塾・予備校が最も多いが、総店舗数では英会話・英語教室が圧倒的に多い結果となった。特に英会話・英語教室では、総店舗数をブランド数で除した「1ブランド当りの店舗数が10店に近く、SC GATEにこの時点で出店実績がある238小業種中15番目に高い値となっている。これは、英会話・英語教室ではSCへの多店舗出店が行われていることを示している。

英会話・英語教室だけではなく、学習塾・予備校、音楽教室も含め、こうした教育系業種は講師としての人的資源が不可欠な業種である。そのため、スタートは個人経営的にならざるを得ない。その後、講師の確保が進むにつれ多店舗化が可能になっていく。こうした教育系業種の中で、SCへの多店舗出店の可能性が見えた英会話・英語教室は、講師が外国人である場合が多く、在留外国人の増加などがこの講師確保を後押しし、多店舗化が進みやすい環境にあると考えられる。また、多店舗化が進むに伴い、知名度が上昇する、カリキュラムや教材などが共通化できる、といった多店舗化効果が生じ、その結果、共用部分の管理費や駐車場負担、共同販促費など、路面店にはない費用負担が発生するSCにも出店できるようになった可能性がある。

 

 

図表2は、当研究所が定期報告している「SC出退店動向レポート 四半期SC出退店D.I.」と同じ方法により、これら4小業種の3ヶ月単位の出退店傾向を、過去5期間分見たものだ。出退店D.I.の算出方法についてはこちらを参照してもらいたい。

音楽教室は出退店傾向がプラスの期間とマイナスの期間があり、明確な出退店傾向は指摘できないが、それ以外の3つの小業種は出店傾向が強いことが明らかだ。特に英会話・英語教室は5期間連続してプラスのD.I.値となった。しかも、そのうち3期間でD.I.値が10‰ポイントを超えている。

学習塾・予備校も、2月~4月の1期間だけマイナスのD.I.値となっているが、これはちょうどこの時期が、学校教育における進学や進級の時期であることから、改装や移転などに取り組んでいる可能性も考えられる。逆にこの期間を除くと、それ以外の4期間は非常に高いD.I.値を示しており、先の英会話・英語教室も含め、まさに、冒頭で紹介した調査結果が出退店傾向に現れていると言える。

また、17年12月に当研究所が公開した「2017年7月~9月期 四半期業種別SC出退店ランキングⅢ(飲食、サービス、アミューズメント)」(記事はこちら)でも、サービス_大業種、アミューズメント_大業種での出店ランキングに、これらの小業種のブランドがランクインしていたことも記憶に新しい。

 

 

【キッズ関連4小業種の出店しているSCタイプ】

キッズ関連小業種は中型~大型、超大型施設に多く出店しているが、駅ビルには少ない

次にこれらの4小業種がどういったSCに出店しているかを見てみたい。

図表3は、これら4つの小業種の出店しているSCの、SCタイプ別SC数構成比を全体と比較したものだ。

小業種により多少の差はあるが、総じて中型から大型、超大型のSCへの出店が多く、小型施設での出店が少ない。一方、同じ規模であっても駅ビルでの出店は、ゼロではないが多いとは言えない。

最も出店傾向がはっきりしているのは、室内遊園地で、郊外の中型・大型施設への出店が顕著に多く、小型施設_駅周辺・市街地への出店が顕著に少ない。

室内遊園地_小業種ほど顕著ではないが、英会話・英語教室も、郊外の中型・大型施設に多く、郊外の小型施設に少ないといった傾向が読み取れる。

 

 

【何%のSCにキッズ関連4小業種が出店しているか】

大型施設_郊外、超大型施設の70%には英会話・英語教室が出店している

次に、これら4小業種について、SCタイプ別の業種出店SC比率を算出した結果を図表4に紹介する。

ここで算出している業種出店SC比率とは、それぞれのSCタイプに分類されるSCのうち、何%にこの業種が出店しているかを算出したものだ。図表には上段と下段の2つの値が記載されているが、上段がこの業種出店SC比率の値、下段は対象SC全体での業種出店SC比率との差を示している。例えば小型駅ビルを例にとると、小型駅ビルの10%には英会話・英語教室が、13%には学習塾・予備校が出店しているが、室内遊園地は1%にしか出店していない。

全体の中で非常に特徴的な組み合せは、英会話・英語教室の大型施設_郊外や超大型施設への出店だ。業種出店SC比率はいずれの場合も70%を超えており、対象SC全体での値より約40%も高い値となった。この小業種は、大型施設_駅周辺市街地の場合も業種出店SC比率は60%弱、全体との差も20%強となった。

室内遊園地の大型施設_郊外への出店の場合も、業種出店SC比率が60%で、全体との差も約40%と大きい。

 

 

【SC所在都道府県の人口密度区分別に見た、キッズ関連4小業種の出店傾向の違い】

英会話・英語教室と音楽教室は似た傾向だが、学習塾・予備校、室内遊園地は異なる傾向

初めての試みだが、SCが所在する都道府県の人口密度を利用して都道府県を3つに区分し、その区分別に、対象都道府県に所在するSCでの、これら4小業種の業種出店SC比率を算出した。なお、各都道府県の区分分けの結果は図表5のとおりである。

この表を見ると、1平方kmあたりの人口が1000人以上に区分された都道府県は、首都圏の1都3県や、名古屋市、大阪市、福岡市などいわゆる大都市圏を持つ都道府県、300人以上1000人未満に区分された都道府県は、上の都道府県の周辺や地方の中心となる都道府県、だと言えそうだ。

 

 

図表6は、SC所在都道府県の人口密度を用いた区分別に4つの小業種の業種出店SC比率を算出したものだ。

英会話・英語教室、音楽教室の2つの小業種では、人口密度が1000人以上の区分(以下、高人口密度区分と表記する)や300人以上1000人未満の区分(以下、中人口密度区分と表記する)で業種出店SC比率が高く、300人未満の区分(以下、低人口密度区分と表記する)で業種出店SC比率が低い結果となった。一方、学習塾・予備校では中人口密度区分で最も業種出店SC比率が高く、低人口密度区分や高人口密度区分では低い結果となった。残る室内遊園地_小業種では、低人口密度区分や中人口密度区分で業種出店SC比率が高く、高人口密度区分で低くなった。

こうした人口密度区分による違いは、英会話・英語教室と音楽教室の2つの小業種は、ターゲット層がキッズだけではなく、勤労者層などにも拡げられることから、それが期待できる大都市圏を持つ高人口密度区分のSCにも出店するが、学習塾・予備校の場合はそうではないことが原因にあると言える。

また、室内遊園地で、中人口密度区分や低人口密度区分で業種出店SC比率が高くなるのは、店舗面積の広さから施設そのものの規模が求められることが原因だと言えるかもしれないが、この業種そのものが持つ集客力なども影響している可能性がある。

 

 

【キッズ関連4小業種の将来】

今回の業種トレンドレポートは物販・飲食以外のキッズ関連の4つの小業種に着目したが、最後に、こうしたキッズ関連小業種の将来を考える上で役に立ついくつかの情報を紹介したい。

まず、ベネッセホールディングス株式会社(岡山県岡山市)が運営する、ベネッセ教育総合研究所が17年10月に発表した「学校外教育活動に関する調査 2017」(出典はこちら)によると、親の教育観についての回答の中で、「親の教育への熱心さが、子どもの将来を左右する」「子どもの将来を考えると、習い事や塾に通わせないと不安である」「子どもにはできるだけ高い学歴を身につけさせたい」といった質問項目に対して、肯定的な回答をした回答者の構成比が50~60%を占めている。しかも、09年、13年、17年の3回の調査のたびにその比率が増加している。キッズを育てる親の視点では強いニーズが継続しそうだ。

今後期待できる業種という視点では、株式会社リクルートマーケティングパートナーズ(東京都中央区)が運営するケイコとマナブ.netが公表している「子供の習い事ランキング 2016年」(出典はこちら)が参考になる。なんと、習わせたいランキングの、1位が英語・英会話、3位 書道、4位 ピアノ、5位 そろばん、6位 学習塾・幼児教室と、今回対象とした業種が上位にランクインしている。特に、3位にランクインした書道、5位にランクインしたそろばんは、習っているランキングでは、書道は7位、そろばんは10位で、習わせたいランキングの方が上位にランクインしており、今後期待できる習い事だと言える。現実に、先に紹介した当研究所の報告「2017年7月~9月期 四半期業種別SC出退店ランキングⅢ(飲食、サービス、アミューズメント)」(記事はこちら)でも、サービス_大業種の出店ランキングの1位に、“そろばん教室88くん”(セイハネットワーク株式会社、福岡県福岡市)がランクインしている。

また、英語・英会話については、11年の学習指導要領で、小学5、6年生に教科以外の教育活動として「話す・聞く」を中心とした外国語活動の時間が創設され、英語・英会話のターゲットがキッズ層に拡大していた。こうした追い風に加え、20年に実施される学習指導要領では、小学3、4年生に前倒しにされ、小学5、6年生は「話す・聞く」に「読む・書く」を加えた教科としての外国語が創設されることになっている。ますます、ターゲットの拡がりが期待できよう。
しかも、こうした英語教育の前倒しに向け、「私立中学、英語の入試が急増 首都圏・近畿圏の3割」といった記事が報道される(朝日新聞、2018年1月19日朝刊)までに至っている。学校の変化への対応に向けて、今後、英語・英会話と学習塾・予備校の2業種を融合させた「英語塾」のような、業態の変化も期待できそうだ。

この20年の学習指導要領で変わるのは、紹介した外国語の前倒しだけではない。情報活用能力としてキーボードによる文字入力やプログラミングなども必修項目として組み込まれるほか、学習の方法として「主体的、対話的で深い学び(アクティブラーニング)」や「多様な他者との協働」が導入されるなど、150年間変わらなかった日本の伝統教育を一新する教育大改革だと言われている。
今回のレポートで触れた4つの小業種以外にも、幼児教室や、SCへの出店数はまだまだ多くないが理科実験教室といった小業種にも注目しておく必要がある。また、これまで大人向け中心だったパソコン教室などもターゲットを見直すことにより、出店するSCが変化してくる可能性もある。

俳人、歌人の正岡子規は、その著「 病牀譫語( びょうしょうせんご)」( 日本附録週報、1899年3月13日、同20日、同27日、同年4月3日、同24日)において「六育」が重要だと説いている。「智育」、「徳育」、「体育」に、感動する心を育む「美育」、人を思いやり生きる気持ちを育む「気育」、生活する技術を身に付ける「技育」の6つだ。
また、東京農業大学教授の木村俊昭氏は、地方活性化や地方創生で重要なのは「六育」による人材育成だと指摘する。こちらの六育は、「食育」、「遊育」、「知育」、「木育」、「健育」、「職育」の6つだ。

これらを聞くと、音楽・美術・書道など創造的活動や、料理、裁縫など生活関連活動、スポーツ教室・遊戯施設など体験的活動、キッズに関連する領域は、まだまだ大きくなっていくだろう。

 

集計対象SC

  • 2017年10月末日までにSC GATEに登録されている
  • SC面積が1,500㎡以上である
  • 2015年11月~2017年10月末日の最大テナント数が10テナント未満ではない
  • SCタイプが「駅ビル」「地下街」「駅周辺・市街地」「郊外」「超大型施設」「アウトレット」「空港」に分類されている
  • 2017年10月末日時点で営業している(図表2以外)
  • 2017年10月末日時点でテナントが退店していない(図表2以外)

【本稿はSC GATEの2017年12月更新データを用いて作成しています】
SC GATEとSC GATEのデータについてはこちらをご覧ください

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