SCトレンド研究所

2017年7月~9月期 四半期SC出退店D.I.

四半期SC出退店D.I.とは

四半期SC出退店D.I.は、SCトレンド研究所が考案した、SCにおけるテナントの増減を表す指数です。「D.I.」(ディー・アイ)は、Diffusion Index(ディフュージョン・インデックス)の略で、景気動向判断指標の一つとして用いられているものです。

四半期SC出退店D.I.は以下の算出式により算出しています。
景気動向判断指標としてのD.I.は百分率を用いているので、その単位は「%ポイント」とされていますが、SCにおける出退店の場合は、母数となるテナント数が多いことから千分率を用い、その単位は「‰ポイント」(パーミルポイント)としています。

四半期出退店D.I.がプラスの場合は出店数が退店数よりも多く、マイナスの場合は出店数よりも退店数が多いことを表します。また、値がゼロよりも離れるほど出店数と退店数のバランスが、どちらか一方に偏っていることになります。

 

業種別四半期出退店D.I.

ファッション系テナントから雑貨・インテリア・サービス系テナントへのシフトが顕著

SCに出店しているテナントの大業種別に2017年7月~9月期を含め5四半期分の四半期出退店D.I.を算出したところ、図表1のような結果となりました。

直近四半期のD.I.値がプラスとなった大業種では、インテリア・寝具・家電_大業種のD.I.が最も大きく店舗数の増加傾向が強いことを表しています。サービス_大業種や生活雑貨_大業種もD.I.がプラスになっています。なお、それぞれの業種のテナント数に差があるため、D.I.値を業種間で比較することはできません。

飲食_大業種はD.I.が1で、ほぼ出退店が拮抗している状態ですが、5四半期の値を見ていると徐々に出店傾向が弱くなってきています。

食品_大業種は、この5四半期中にD.I.がプラスからマイナスに転じており、一時多く見られた、ファッション系SCへの食物販テナントの出店の動きなどが、弱まっている可能性があります。

ファッション_大業種は、この期間中のすべての四半期でD.I.がマイナスとなっており、出店数よりも退店数が大きく、テナント数が減少し続けていることになります。また、ファッション雑貨_大業種も5四半期中4つの四半期でD.I.がマイナスになっています。

こうした大業種の動向から、SCにおける業種構成が、ファッション系テナント中心の構成から、雑貨、インテリア、サービス系の構成にシフトしつつあることが伺えます。

17年1月~3月期以降、百貨店大業種のD.I.が大きくマイナスに振れていますが、これは、例えば百貨店の1フロアを別のテナントに置き換えるなどの動きが見られますが、SCでの百貨店の店舗数そのものが少ないためわずかな出退店でも指数化の過程で増幅され、こうした値となったものと考えられます。

 

SCタイプ別四半期出退店D.I.

大型_郊外SCと小型_郊外SCに挟まれ苦戦する中型_郊外SC

SC GATEが定義しているSCタイプ別に、同期間の四半期出退店D.I.を算出した結果は、図表2のようになりました。

郊外の施設に着目すると、「大型施設_郊外」は、5四半期のすべてでD.I.がプラスとなっています。2017年1月~3月期以降「小型施設_郊外」はD.I.がプラスとなりましたが、「中型施設_郊外」はマイナスになっています。広域集客力のある大型SCと足元集客力のある小型SCの間に挟まれ、中型SCのポジションが揺らいでいる可能性が伺えます。

駅周辺・市街地では、中型SCのD.I.が3四半期連続でプラスを示していますが、小型SCは3四半期連続でマイナスになっています。小型SCでは多くのテナントを出店させることができないことから、先の業種別で見られたファッションから雑貨・インテリア・サービスへという業種間シフトの中で、小型SCはその特徴を打ち出しにくくなっていると思われます。

駅ビルでは、17年1月~3月期にD.I.が大きな値となっていますが、これはD.I.は新規開業SCがあったことが影響しています。

また、駅ナカは5四半期中、3つの四半期で大きなD.I.となっており、いまだに駅ナカの開発が進んでいることが伺えます。

 

地方別四半期出退店D.I.

地方のSCではテナント数が減少し始めている

SCの所在する地方別に、同期間の四半期出退店D.I.を算出した結果は、図表3のようになりました。

直近の17年7月~9月期のD.I.では、関東地方と近畿地方を除く6つの地方でD.I.がマイナスという結果になっています。その前年の16年7月~9月期では、中国地方・四国地方・九州地方などではプラスであったことを踏まえると、いわゆる大都市圏以外のSCへの出店傾向が弱まり始めているのではないかということが懸念されます。

 

最後に

本稿では、新たに考案した四半期出退店D.I.を用いてSCにおける出退店バランスを見てきました。ただ、多くのSCでは新規開業や大規模リニューアルが行われる時期が固定化されており、出退店D.I.はその影響を受けることから、年間の波動などこの指標の特性についても今後観察していく必要があります。

そのため、SCトレンド研究所では、この四半期出退店D.I.を毎年5月、8月、11月、翌年2月に、それぞれ1月~3月期、4月~6月期、7月~9月期、10月~12月期の算出結果を公表していく予定にしています。

 

集計対象SC

  • 2017年9月末日までにSC GATEに登録されている
  • SC面積が1,500㎡以上である
  • 2016年10月~2017年9月末日の最大テナント数が10テナント未満ではない
  • SCタイプが「駅ナカ」「駅ビル」「地下街」「駅周辺・市街地」「郊外」「超大型施設」「アウトレット」「空港」に分類されている

【本稿はSC GATEの2017年11月更新データを用いて作成しています】
SC GATEとSC GATEのデータについてはこちらをご覧ください