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ショッピングセンターの退店傾向脱出は幻だった?! - 【2019年1月~3月期 四半期SC出退店D.I.】

ショッピングセンターの退店傾向脱出は幻だった?! - 【2019年1月~3月期 四半期SC出退店D.I.】

ショッピングセンターでの出店と退店のバランスを示す指標、四半期SC出退店D.I.値(四半期SC出退店D.I.の説明は本記事後半をご覧ください)を、2019年1月~3月を対象期間として、業種別、SCタイプ別、SC所在地方別に算出した結果を報告します。
前四半期の報告では多くの区分でD.I.値の好転が観察されていましたが、果たしてこの四半期はどのような結果となったのでしょうか。

なお、四半期SC出退店D.I.はSC GATEのデータから算出されており、このデータは毎月、新規開業以外のショッピングセンターも含め、新たな施設が追加されていくことから、D.I.値を時系列でみる際には、厳密な連続性はないことに留意する必要があります。

また、2四半期前の報告(記事はこちら)から、D.I.値の算出に用いていた対象ショッピングセンターの定義を「対象四半期の期初までにSC GATEに登録され、かつ、対象四半期の期末に営業しているショッピングセンター」を対象とするように変更しています。

業種別出退店D.I. - 【2019年1月~3月期】

テナント数の増加が見られたのは1業種のみ

ショッピングセンターに出店しているテナントの大業種別に、19年1月~3月期を含め過去5四半期分の四半期SC出退店D.I.を算出した結果が図表1です。

前四半期の報告(記事はこちら)では、全11業種のうちファッション雑貨(本記事では、大業種名に_大業種を付加せずに記載します)のD.I.値だけがマイナスだったのに対し、当四半期では、サービスのみD.I.値がプラスという、前四半期とは真逆ともいえそうな結果となりました。
前四半期の報告で、「トンネルを抜け出たかの判断は当四半期にゆだねる」としていた不安が的中した結果となっています。

特に、出店傾向が続いていたインテリア・寝具・家電やアミューズメントでも、当四半期はD.I.値がマイナスに転じており、いよいよ、出店傾向が続いているのはサービスのみという状況になっています。

図表1 大業種別四半期SC出退店D.I.

SCタイプ別出退店D.I. - 【2019年1月~3月期】

駅周辺・市街地は全規模でマイナスのD.I.値に逆戻り!

SC GATEが定義しているSCタイプ別に、同期間の四半期SC出退店D.I.を算出した結果は、図表2のようになりました。

前四半期の報告(記事はこちら)では、小型駅ビルと小型施設_郊外の2タイプがマイナスのD.I.値となっていましたが、当四半期ではそれら2タイプに加え、大型・中型・小型のすべての規模の駅周辺・市街地の3タイプの施設と、中型施設_郊外、アウトレットが加わりました。14のSCタイプのうち7タイプの施設でD.I.値がマイナスとなっています。

特に小型施設_郊外のSCタイプの場合、前四半期の段階ですでに5四半期連続したマイナスのD.I.値であり、当四半期の結果も踏まえると6四半期連続して、テナント数が減少していることになります。
また、前四半期の報告で、5四半期連続したマイナスのD.I.値から好転したとしていた駅周辺・市街地の3つのSCタイプは、再びマイナスのD.I.値となり、テナント数減少が続いているようです。

図表2 SCタイプ別四半期SC出退店D.I.

地方別出退店D.I. - 【2019年1月~3月期】

全地方のD.I.値がマイナスに!

ショッピングセンターの所在する地方別に、同期間の四半期SC出退店D.I.を算出した結果は、図表3のようになりました。

この四半期は、全8地方のうち、九州・沖縄地方のD.I.値がゼロである以外は、残り7地方のすべてでD.I.値がマイナスとなりました。
全8地方のうち、D.I.値がマイナスとなった地方が7地方であった前々四半期(記事はこちら)と同じような状況に戻り、まさに前四半期が特別だったといわざるを得ません。

図表3 SC所在地方別四半期SC出退店D.I.

四半期SC出退店D.I.とは

四半期SC出退店D.I.は、SCトレンド研究所が考案した、SCにおけるテナントの増減を表す指数です(四半期SC出退店D.I.の定義はこちらをご参照ください)。「D.I.」(ディー・アイ)は、Diffusion Index(ディフュージョン・インデックス)の略で、景気動向判断指標の一つとして用いられているものです。

四半期SC出退店D.I.がプラスの場合は出店数が退店数よりも多く、マイナスの場合は出店数よりも退店数が多いことを表します。また、値がゼロから離れるほど出店数と退店数のバランスが、どちらか一方に偏っていることになります。

なお、四半期SC出退店D.I.はショッピングセンターでの出退店のみを見ており、多くのショップブランドでは路面店も含めショッピングセンター以外での出退店があり、出店戦略の変更などに伴う特定のショップブランドの出退店がD.I.値に影響することがあることから、業種別SC出退店D.I.がそのまま業種の勢いなどを表すものではありません。
同様に、ショッピングセンターの大規模リニューアルなどに伴う出退店もD.I.値に影響しますので、SCタイプ別、SC所在地方別の場合も、SC出退店D.I.値がそのままその区分の勢いなどを表すものではないことに留意する必要があります。

図表1、図表2、図表3の集計対象SC

  • 対象四半期の期初までにSC GATEに登録されている
  • 対象四半期の期末時点で営業している
  • SC面積が1,500㎡以上である
  • 2017年3月~2019年3月末日の最大テナント数が10テナント未満ではない
  • SCタイプが「駅ナカ」「駅ビル」「地下街」「駅周辺・市街地」「郊外」「超大型施設」「アウトレット」「空港」に分類されている

【本稿はSC GATEの2019年4月末時点データを用いて作成しています】

SC GATEとSC GATEのデータについてはこちらをご覧ください

関連レポート

  • 前四半期の四半期SC出退店D.I.はこちら