SCトレンド研究所

陰りが見え始めたインテリア・寝具・家電の出店傾向 - 【2018年4月~6月期 四半期SC出退店D.I.】

 

ショッピングセンターでの出店と退店のバランスを示す指標、四半期SC出退店D.I.値(四半期SC出退店D.I.の説明は本記事後半をご覧ください)を、2018年4月~6月を対象期間として、業種別、SCタイプ別、SC所在地方別に算出した結果を報告します。

なお、四半期SC出退店D.I.はSC GATEのデータから算出されており、このデータは毎月、新規開業以外のショッピングセンターも含め、新たな施設が追加されていくことから、このレポートに記載された過去の四半期のD.I.値と過去のレポートのD.I.値は一致しない場合があります。

 

2018年4月~6月 業種別四半期SC出退店D.I.

インテリア・寝具・家電のD.I.値がマイナスに / ファッション系業種の退店傾向は弱まる

ショッピングセンターに出店しているテナントの大業種別に、18年4月~6月期を含め5四半期分の四半期SC出退店D.I.を算出した結果が図表1です。

この四半期では、データを作成している全11業種のうち、D.I.値がプラスとなった業種が4業種、マイナスとなった業種が7業種となりました。

ファッション(本記事では、大業種名に_大業種を付加せずに記載します)、ファッション雑貨の両業種は、17年4月以降、D.I.値が5四半期連続でマイナスとなりました。一方、サービス、アミューズメントの両業種は5四半期連続してプラスとなり、業種間で明暗が分かれました。まさに、「ファッション系業種の低迷」と「モノ消費からコト消費へのシフト」という昨今の消費動向を如実に反映した結果となっています。

ただ、ファッション、ファッション雑貨は、D.I.値が引き続きマイナスで退店傾向に変わりはありませんが、その退店の勢いは弱まりつつあることが伺えます。

アミューズメントについては前四半期にD.I.値がプラスからマイナスに転じたことから、出店傾向が退店傾向に転じた可能性が懸念されましたが、この四半期の結果を見ると、引き続き出店傾向が続いているという結果になりました

この四半期の特徴としては、3四半期にわたって出店傾向が続いていたインテリア・寝具・家電大業種が、マイナスのD.I.値を示したことです。インテリア雑貨店、まくら専門店などが出店をけん引していましたが、その傾向が弱まっている可能性があります。

同様に、安定した動きを示していた食品も、前四半期のプラスのD.I.値から、今四半期はマイナスのD.I.値に転じており、今後の動きを注視しておく必要があります。

 

2018年4月~6月 SCタイプ別四半期SC出退店D.I.

大型施設での店舗数増が続く / 一方で小型施設は退店に傾く

SC GATEが定義しているSCタイプ別に、同期間の四半期SC出退店D.I.を算出した結果は、図表2のようになりました。

この四半期のD.I.値で非常に目立つのが、駅ナカでD.I.値が大きなマイナスを示していることです。これについては、駅ナカは施設数が少ないことから指標が大きく変化する可能性があったことに加え、この期間中に特定施設で営業終了の動きがあったことが原因となっています。

その他の動きに目を移すと、大型駅ビルでは4四半期、大型施設_郊外では5四半期連続して、D.I.値のプラスが続いています。ただ、両SCタイプともD.I.値そのものの値は低下していますし、大型施設_駅周辺・市街地ではD.I.値がマイナスであることから。大型施設全体で出店傾向が続いているわけではないと考えられます。

一方、この四半期は立地を問わず小型施設でマイナスのD.I.値が見られています。

また、17年4月以降、4四半期続いていた中型施設_郊外での退店傾向は終息しており、この四半期ではプラスのD.I.値に転じています。この動きは、前四半期でも触れていますが、前々四半期の出退店ランキングなどで見られていたGMS系施設でのテナントの見直しの動きが、ひと段落したことが背景にあるものと思われます。

 

2018年4月~6月 地方別四半期SC出退店D.I.

東北地方での出店が回復

ショッピングセンターの所在する地方別に、同期間の四半期SC出退店D.I.を算出した結果は、図表3のようになりました。

直近の18年4月~6月期のD.I.を見ると、東北地方、中国地方の2つの地方でD.I.がプラスとなりました。

東北地方は、前々四半期、前四半期はD.I.がマイナスだったものが、この四半期にはプラスに転じたことになります。

また、中国地方も、17年12月までマイナスだったD.I.値が、この四半期も含め2四半期連続してプラスとなっています。

四半期SC出退店D.I.とは

四半期SC出退店D.I.は、SCトレンド研究所が考案した、SCにおけるテナントの増減を表す指数です(四半期SC出退店D.I.の定義はこちらをご参照ください)。「D.I.」(ディー・アイ)は、Diffusion Index(ディフュージョン・インデックス)の略で、景気動向判断指標の一つとして用いられているものです。

四半期SC出退店D.I.がプラスの場合は出店数が退店数よりも多く、マイナスの場合は出店数よりも退店数が多いことを表します。また、値がゼロから離れるほど出店数と退店数のバランスが、どちらか一方に偏っていることになります。

なお、四半期SC出退店D.I.はショッピングセンター(SC)での出退店のみを見ており、多くのショップブランドでは路面店も含めSC以外での出退店があり、出店戦略の変更などに伴う特定のショップブランドの出退店がD.I.値に影響することがあることから、業種別SC出退店D.I.がそのまま業種の勢いなどを表すものではありません。同様に、ショッピングセンターの新規開業や大規模リニューアルなどに伴う出退店もD.I.値に影響しますので、SCタイプ別、SC所在地方別の場合も、SC出退店D.I.値がそのままその区分の勢いなどを表すものではないことに留意する必要があります。

集計対象SC

  • 2018年6月末日までにSC GATEに登録されている
  • SC面積が1,500㎡以上である
  • 2016年6月~2018年6月末日の最大テナント数が10テナント未満ではない
  • SCタイプが「駅ナカ」「駅ビル」「地下街」「駅周辺・市街地」「郊外」「超大型施設」「アウトレット」「空港」に分類されている

【本稿はSC GATEの2018年7月末時点のデータを用いて作成しています】

SC GATEとSC GATEのデータについてはこちらをご覧ください