2019年4月~6月期の飲食大業種のSC(ショッピングセンター)出店ランキングを報告します。
この出退店ランキングは、この期間中にショッピングセンターに出店、もしくはショッピングセンターから退店したブランドについて、出店数と退店数から差引出店数と差引退店数を算出し、その上位から20位までのブランドを表示したものです。ランキング方法や詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
目次
2019年4月~6月期の飲食大業種のSC出店ランキングは図表1のとおりとなりました。
出店ランキングでは、“Pepper Lunch”が差引出店数9で1位となりました。前回まで3回連続1位だった“いきなり!ステーキ”(Pepper Lunchと同じく運営は株式会社ペッパーフードサービス)は6位にランクダウンしています。
同社発表(2019年8月29日「2019年12月期第2四半期決算説明会」資料)によると、いきなり!ステーキ業態の上期売上高累計は既存店昨対75.4%と低迷していますが、一方“Pepper Lunch”は99.6%と安定しています。“Pepper Lunch”は、国内25店舗以上の出店目標を掲げており、具体的な施策としては「SCからのオファー増加に伴う新規出店、“いきなり!ステーキ”からの業態変更、増税・軽減税率を見据えデリバリー・テイクアウトの強化を図る」としています。SCからの出店オファーが増えていることも、“Pepper Lunch”出店数アップに繋がっている1つの要因だと思われます。
また、“いきなり!ステーキ”に関しては「出店を減速させ、既存店のてこ入れ」を行うとのことで、出店ランキングが下がったことも戦略的理由だということが分かります。都心部ではステーキブームが続いていますが、総務省の一般外食の家計消費支出は、地方が都心部に比べて明らかに低いことを示しています。 地方のGMS系SCには“Pepper Lunch”業態で進出拡大、その背景が見えてきました。
また、依然としてタピオカドリンクショップの出店ブームが続いています。
“Gong cha”(株式会社ゴンチャジャパン)が差引出店数6で3位、“タピオカスイーツBULLPULU”(株式会社J・J)が差引出店数5で5位にランクインしています。
テレビをはじめとするメディアでもタピオカ特集は続いており、「今日、タピる?」という言葉もすっかり定着しました。
南米産のキャッサバ芋から採った真っ白なでんぷんを、カラメルにつけて黒く色づけ、湯で茹でてガムシロップに漬けるという工程をたどってあのツブツブは完成します。
タピオカブームの過熱ぶりに、原料のキャッサバ粉が入手困難となり、タピオカが供給不足に陥っているそうです。
そうしたなか、タピオカショップの中でも注目株は差し引き出店数2で13位の“THE ALLEY LUJIAOXIANG”です。
株式会社ポトマックは神戸に本社があり、ルミネなどおしゃれ感度の高いSCに出店しており、他店と比べてもそのスタイリッシュさは一線を画しています。
白砂糖ではなくキビ糖を使い、お茶を作っても3時間経過すると捨て、常にフレッシュなお茶を提供しているなど、品質と味のクオリティが高いことも他との違いと言えるでしょう。
タピオカ好きの女子は、飲み歩きして比べているようで“THE ALLEY LUJIAOXIANG”のは美味しいと定評があります。
元ファッション系の外部ディレクターを入れて新コンセプトの店づくりも進めているようで、インスタグラムの世界観も上手に表現されているなど、ブランディングの上で見習う部分が多いところです。
出店ランキング20件中、9件がカフェ業態の店ですが、カフェの細分化も注目したいところです。
第13位の“Urth Caffé”はNYマンハッタン発のオーガニックコーヒーが売りのカフェです。
地球と顧客を守る会社として、「化学物質に汚染され森林破壊と抑圧的な労働条件のもとで作られているコーヒーとは全く違った、唯一のオーガニックコーヒー会社として、その価値を届け、新しいコーヒー産業のあり方を世界の人たちに知って欲しい」という強い信念に基づいています。
自社で100%化学肥料、化学物質を使わないオーガニック栽培でコーヒーを育て、労働者の環境も守っています。
店内では、野菜やフルーツたっぷりのスムージー、サンドイッチやボリュームサラダなどが食べられ、健康志向のおしゃれな人たちからの支持を集めているようです。
サスティナブルかつエシカルな世の中の流れを代表するようなショップブランドです。
退店ランキング(図表2)に視点を移すと、以前のレポートでも書かれているとおり、チェーン店が苦戦していることが分かります。
食に対しては、「美味しいことは当たり前」になってきて、消費者の成熟度が以前にも増してスピードアップしているように感じます。
チェーン店で有名、メニュー豊富だからラクで安心という時代から、個々の店舗の特徴や希少性が有り難がられている流れを感じます。
「ここの〇〇が美味しい」「この店は〇〇が違う」という、その店だけの特徴がなければ、消費者にとっての外食する理由にならない、という時代です。
退店ランキング3位の“とっさんラーメン”は、鶏がらラーメンを中心としたラーメン店 “らーめん一鳥(いっちょう)”へ入替しているためのランクインになったようです。
全国初のタマゴサンドの新業態“oeuf TAMACO サンド”は退店ランキング7位ですが、現在同社HPにはこの屋号はないので、ブランド廃止した模様です。
大阿蘇どりそぼろ、ローストチキン&大葉ソース、ハラペーニョ、鶏白レバーパテ、明太子、チキンカレーヨーグルト、鯛みそ&白ごま、などかなり珍しい組み合わせのたまごサンドが50種類!その専門性は特異なものですが、何を選んでも卵が主役という部分はニッチすぎたのかもしれません。
専門性が重要な時代ではありますが、何に特化するのかを見極めることも大切なようです。
集計対象ショッピングセンター
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【本稿はSC GATEの2019年7月末時点データを用いて作成しています】
SC GATEとSC GATEのデータについてはこちらをご覧ください
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