2019年1月~3月期の飲食大業種のSC出店ランキングを報告します。
この出退店ランキングは、この期間中にショッピングセンターに出店、もしくはショッピングセンターから退店したブランドについて、出店数と退店数から差引出店数と差引退店数を算出し、その上位から20位までのブランドを表示したものです。ランキング方法や詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
なお、当四半期から、ランキング表のデザインを変更しています。
目次
2019年1月~3月期の飲食大業種のSC出店ランキングは図表1のとおりとなりました。
出店ランキングでは、“いきなり!ステーキ”が、差引出店数7で3回連続の1位となりました。
同ブランドを運営する株式会社ペッパーフードサービス(東京都墨田区)の発表では、当四半期の国内出店数は47(海外はなし)で、総店舗数は439となりました。2019年12月期も前年並みの210店の出店を計画しており、引き続き強気の出店が続く見通しです。
半面、懸念されるのが共食いによる既存店減収です。当四半期も売上高は37.9%増となったものの、セグメント利益は18.2%減。既存店減収と、店舗増に伴う経費増が響きました。今後もこの傾向が続くと、大量出店に見直しがかかる可能性も否定できません。
2位は差引出店数5の“鎌倉パスタ”、“天麩羅 えびのや”、“肉のヤマキ商店”で、前回2位の“Saizeriya”を1差で追い抜きました。
鎌倉パスタは、サンマルクホールディングス(3月期、岡山)が運営する主力業態の一つ。「強みであるパスタのメニュー開発に注力し、セットメニューなどの見直しにより改善を進め」(同社決算短信)、通期で8店を出店し、期末店舗数を207としたことから、下期集中出店だったことが分かります。
一時期『野菜が肉を超えた?』とみられたものの、今回のランキングでは、依然としてステーキ・ハンバーグ業種が堅調に出店していることが明らかになりました。
1位の“いきなり!ステーキ”以外にランキングしているのは“Pepper Lunch”と“いしがまやハンバーグ”、“やっぱりステーキ”の合計4ブランド。
“いしがまやハンバーグ”は、イズミ・フード・サービス株式会社によるフランチャイズ運営で、イズミの「ゆめタウン」に出店、展開エリアを広げたことになります。
同様に注目されるのが、今回初登場の“やっぱりステーキ”です。
運営するのはディーズプランニング(沖縄県那覇市、義元大蔵代表取締役)。現在、沖縄に16、それ以外国内に17(フランチャイズ含む)店舗展開していますが、イオン系のショッピングセンターに7店出店。
今後も店舗数を伸ばすことが予想されます。
初登場という点では、6位の“100時間カレー”も注目株でしょうか。
運営するのはアークス(東京・池袋、米田周平代表)。2013年、武蔵小山に23平方メートルで「産声をあげ」(同社HP)、翌年には武蔵小杉、神田、浦安に出店し、有名な「神田カレーグランプリ」に2014、16年と2度も優勝しました。
名声を買われてか、2017年4月グランツリー武蔵小杉にショッピングセンター初進出。以来ショッピングセンターへ着々と出店を進めています。
退店ランキング(図表2)に視点を移すと、退店ランキングは “SUBWAY”が差引退店数14で断トツの1位になりました。
“SUBWAY”については前四半期の記事(記事はこちら)でも取り上げていますが、東洋経済オンラインの「スタバと大量閉店『黒船チェーン』の決定的な差 本国で成功したコンセプトを生かせていない」(記事はこちら)が興味深い分析をしています。
“Starbucks Coffee”は出店ランキング(図表1)でも3出店で6位に入っていますが、“SUBWAY”と“Burger King”、“Krispy Kreme Doughnuts”は大量閉店中。
3ブランドとも実は「アメリカで成功したコンセプトが日本市場に文化として受け入られていない。ここが共通の深層要因であり、乗り越えられていない魔物の正体」と断言しています。
実は、出店ランキングでは1位だった“いきなり!ステーキ”にも同じことが言えるのです。
2017年2月、ニューヨークに1号店を開設以来、11店を出店しましたが、7店を閉鎖。米ナスダック市場上場を廃止することを決めました。
日本人が好むレアだけを展開したこと、立ち食いというスタイルがニューヨーカーに受け入れられなかったことなどが、敗因と言われていますが、これも「日本市場で成功したコンセプトが、米国市場には受け入れられなかった」ことになるわけです。
2位は“ケンタッキーフライドチキン”と“ファミール”、“ミスタードーナツ”(差引退店数6)です。
“ケンタッキーフライドチキン”は当四半期の出店はゼロでしたが、2019年3月期通期では22。半面、直営店を中心に2倍程度をスクラップし、期末店舗数は1132(21減)となり、3期ぶりに店舗数が減少しました。
しかし運営する日本KFCホールディングスの売り上げは743億円(1.2%増)、営業利益22億円(4倍弱の増)で予想をクリア。2020年3月期も同様の傾向で、総店舗数は横ばいの見通しです。今期に入って既存店売り上げが増収に転じているのは明るい材料です。
“ファミール”は、5位“芝のラーメン屋さん”、11位の“ポッポ”とともにセブン&アイ・フードシステムズの運営です。
セブン&アイ傘下のイトーヨーカ堂が2月までに5店を閉鎖したのが大きく影響しています。ヨーカ堂の閉鎖計画はまだ残っており、今後も閉鎖が続く見込みです。
“ミスタードーナツ”は退店8も出店も2。2019年3月期では不採算店クローズを進め、平均稼働店舗数は前期比74減の1046となりました。既存店売り上げは0.3%減ですが、下期はプラスに転じています。
なお、前回1位の“デジキュー”は出店2・退店0で出店ランキング16位に浮上。期間限定サービスゆえの一時的な退店だったことが明らかになりました。
集計対象ショッピングセンター
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【本稿はSC GATEの2019年4月末時点データを用いて作成しています】
SC GATEとSC GATEのデータについてはこちらをご覧ください
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