SCトレンド研究所

スポーツ業種で見えた様々な動きとは - 【スポーツ・ホビー大業種四半期SC出退店ランキング】

2018年7月~9月期のスポーツ・ホビー大業種のSC出店ランキングを報告します。

この出退店ランキングは、この期間中にショッピングセンターに出店、もしくはショッピングセンターから退店したブランドについて、出店数と退店数から差引出店数を算出し、その上位から20位までのブランドを表示したものです。ランキング方法や詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

スポーツ・ホビー大業種のSC出退店ランキング - 【2018年7月~9月期】

スポーツは明暗が分かれる / ホビーでは“トイざらス”がこの四半期も躍進

2018年7月~9月期のスポーツ・ホビー大業種のSC出店ランキングは図表1のとおりとなりました。

出店ランキングでは、玩具小業種の“トイざらス”が差引出店数4店で1位となりました。前四半期に報告(記事はこちら)した、このブランドを国内で運営する日本トイザらス株式会社(神奈川県川崎市)の店舗網拡大の発表どおり、着実に店舗網を拡大しているようです。なお、知ってのとおり、同社が運営するブランドにはこの“トイざらス”以外に、もう一つ“ベビーざらス”があり、このブランドも今回の出店ランキングに差引出店数2店で2位にランクインしていることから、同社の積極的出店意向が伺えます。

出店ランキングの2位には、先に触れた“ベビーざらス”以外に、“有賀園ゴルフ”、“AEON BIKE”、“PEARLY GATES、“H.L.N.A STORE”の4ブランドが差引出店数2店でランクインしています。これらのブランドはいずれもスポーツ分野に関わる商品を扱うブランドで、しかも、ゴルフ、ボードスポーツや自転車など、スポーツの中でも特定分野に特化した商品を扱うブランドであることが共通しています。差引出店数が1店で7位にランクインした他のブランドを見ても、そうした傾向が伺えることから、前四半期でも報告(記事はこちら)したスポーツ分野での専門化の流れが続いています。

今回の出店ランキングでは、差引出店数は多くはないものの、単なる物販とは趣を異にするブランドが見られました。それは差引出店数1店で7位にランクインした“IWAKI FC CLUBHOUSE”です。このブランドを運営する株式会社いわきスポーツクラブ(福島県いわき市)は、アンダーアーマーを日本で展開する株式会社ドーム(東京都江東区)が、サッカークラブ「いわきFC」の運営を主事業として、15年12月に新たに設立した会社となっています。その後、ドーム社のノウハウを最大限に生かしたクラブ運営により「いわきFC」は快進撃を続け、さらに、17年にいわき市が国に提出した「スポーツを軸にしたまちづくり」を掲げる基本計画が、「地域未来投資促進法」に基づく国の同意を得たことで、地方公共団体を巻き込んだ地域活性化の動きへと展開し始めています。今回のショッピングセンターへの出店は、そうした動きを踏まえ、選手が参加するイベントを開催するなど「いわきFCの世界観を体感できる空間」をコンセプトとし、いわきFCオリジナルグッズやアンダーアーマー製いわきFCライセンスグッズ、“IWAKI FC CLUBHOUSE”でしか手に入らない限定グッズを販売することで、これまで接点のなかった人にも「いわきFC」を知ってもらい、地域活性化を後押しすることを期待しての出店となっています。

退店ランキング(図表2)に視点を移すと、退店ランキングの1位はクラフト(手芸)小業種の“クラフトハートトーカイ”(差引退店数8店)となりました。同ブランドは、前四半期にも報告(記事はこちら)したとおり、同ブランドを運営する藤久株式会社(愛知県名古屋市)は、ボタンや糸など標準的な手芸用品を中心にネット通販や100円ショップに顧客が流れていることを背景に、不採算店の退店を含む出店政策の見直しを進めています。

退店ランキングの2位は、“おもちゃ屋さんの倉庫”(差引退店数5店)となりました。このブランドは、前四半期(記事はこちら)は出店数4店、退店数2店で出店ランキングに入っていたものが、この四半期は退店ランキングの2位となったものです。同ブランドを運営する株式会社キャプテン(愛知県名古屋市)は3年後をめどに東証マザーズへの上場を目指すことを17年10月に発表していることから、前四半期も指摘している(記事はこちら)とおり、出店するショッピングセンターの見直しなどを進めている可能性があります。

また、今回の退店ランキングでは、株式会社メガスポーツ(千葉県千葉市)が運営する、“SPORTS AUTHORITY”と“CORNERS SPORTS AUTHORITY”が、いずれも差引退店数2店で7位に入っています。これらのブランドは、スポーツ用品を総合的に販売するブランドで、出店ランキングに特定スポーツ分野を専門的に扱うブランドが多くランクインしていたことと対照的な動きとなっています。また、同社は18年1月に消費者庁から不当な二重価格表示(有利誤認)に対する措置命令を受けるとともに、18年2月決算で43億円を超える純損失を計上し、純資産で債務超過に陥ったとの報道がなされるなど、ブランドとしても、また、運営企業としても、その動向に注目しておく必要があります。

集計対象ショッピングセンター

  • 2018年9月末日までにSC GATEに登録されている
  • SC面積が1,500㎡以上である
  • 2016年10月~2018年9月末日の最大テナント数が10テナント未満ではない
  • SCタイプが「駅ナカ」「駅ビル」「地下街」「駅周辺・市街地」「郊外」「超大型施設」「アウトレット」「空港」に分類されている

【本稿はSC GATEの2018年10月末時点データを用いて作成しています】

SC GATEとSC GATEのデータについてはこちらをご覧ください

関連レポート

  • 前四半期のこの業種(スポーツ・ホビー)のランキングはこちら