SCトレンド研究所

ライフスタイル雑貨の明暗を分けた2つの背景 - 【生活雑貨大業種四半期SC出退店ランキング】

 

2018年7月~9月期の生活雑貨大業種のSC出店ランキングを報告します。

この出退店ランキングは、この期間中にショッピングセンターに出店、もしくはショッピングセンターから退店したブランドについて、出店数と退店数から差引出店数を算出し、その上位から20位までのブランドを表示したものです。ランキング方法や詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

 

生活雑貨大業種のSC出退店ランキング - 【2018年7月~9月期】

明暗が分かれるライフスタイル雑貨小業種ブランド、その背景にあるものは?

2018年7月~9月期の生活雑貨大業種のSC出店ランキングは図表1のとおりとなりました。

出店ランキングでは、前四半期と同様、ライフスタイル雑貨小業種の“HAPiNS”(差引出店数20店)が1位にランクインしています。この“HAPiNS”は、前々四半期のレポート(記事はこちら)でも紹介しているとおり、“PASSPORT”ブランドの“HAPiNS”ブランドへの移行によるもので、退店ランキングの1位には“PASSPORT”ブランドが差引退店数13店でランクインしています。ただ、この四半期も含め過去4四半期の差引出店数と差引退店数の差を見ると、当四半期は+7店、前四半期も+7店、2四半期前3四半期前ともいずれも+7店と、安定してショッピングセンターでの店舗数を増加させていることから、単なるブランド変更というよりも、攻めのためのブランド変更となっていると考えられます。それを裏付けるかのように、これらのブランドの運営企業は、16年5月のRIZAPグループ入りから2年を経て、18年8月1日付で社名を、株式会社パスポート(東京都品川区)から株式会社HAPiNSに変更し、新たなブランドコンセプトの確立を目指していることを発表しています。

ランキング2位は差引出店数7店で、コンタクト・めがね・補聴器小業種の“Zoff”がランクインしました。この小業種のブランドは、この四半期のランキングでは同ブランドのみのランクインとなっていますが、前四半期前々四半期などを振り返ると、この小業種のブランドが継続的に散見されていることから、業種としての出店傾向が続いていると考えられます。

同じく2位には “DAISO”(差引出店数7店)もランクインしています。前四半期でも報告した均一価格ショップの出店傾向はこの四半期も継続しており、今回のランキングには、この“DAISO”を含め7ブランドがランクインしています。

今回のランキングでは、これまでのランキングであまりランクインしていなかったキッチン・ハウスキーピング小業種から“兵左衛門”が14位、差引出店数2店でランクインしました。同ブランドを運営する株式会社兵左衛門(ひょうざえもん、福井県小浜市)は、箸および漆工芸品の製造販売会社で、09年1月に麻生太郎内閣総理大臣(当時)を通じて、アメリカのバラク・オバマ大統領(当時)にプレゼントされた箸を製造した企業として知られています。また、同社は、日本プロ野球選手会のパートナー企業(紹介サイトはこちら)として、試合などで使用中に折れた木製バットを原材料としたユニークな箸“かっとばし!!”を製造、販売していることが海外でも話題になるとともに、その収益を木製バットの素材として利用される「アオダモ」を育成すべく「アオダモ資源育成の会」に還元するといった取り組みを展開しています。

 

退店ランキング(図表2)に視点を移すと、前四半期と同様、出店ランキングで取り上げたライフスタイル雑貨小業種の“PASSPORT”が差引退店数13店で1位にランクインし、2位にはバラエティ雑貨小業種の“Plus Heart”が差引退店数13店でランクインしています。

また、3位以降では“straw”(4位、差引退店数7店)、“NCL”、“MAMAIKUKO”(いずれも5位、差引退店数6店)、“JARDIN”(8位、差引退店数5店)といったライフスタイル雑貨小業種のブランドが上位にランクインしています。これらのブランドを運営する企業には、“MAMAIKUKO”を運営する株式会社システムジュウヨン(大阪市北区)のように17年11月に民事再生手続きを開始し、18年10月にそれが終結した例や、“straw”、“JARDIN”を運営する有限会社ロード&スカイ(福岡県遠賀郡遠賀町)と関連会社の株式会社JARDIN(同住所)のように破産手続きに入った例も見られます。こうしたライフスタイル雑貨運営企業の苦戦の背景には、出店ランキングで触れた均一価格ショップの攻勢による低価格化と競争激化があると指摘されており、まさに、均一価格ショップの高質化に伴って、従来型のライフスタイル雑貨ショップが駆逐され始めているような印象を受けます。

集計対象ショッピングセンター

  • 2018年9月末日までにSC GATEに登録されている
  • SC面積が1,500㎡以上である
  • 2016年10月~2018年9月末日の最大テナント数が10テナント未満ではない
  • SCタイプが「駅ナカ」「駅ビル」「地下街」「駅周辺・市街地」「郊外」「超大型施設」「アウトレット」「空港」に分類されている

【本稿はSC GATEの2018年10月末時点データを用いて作成しています】

SC GATEとSC GATEのデータについてはこちらをご覧ください

関連レポート

  • 前四半期のこの業種(生活雑貨)のランキングはこちら